glafit
GFR-01

バイクと比べて
 長所:1 軽い 2 可搬性(輪行)
 短所:1 操舵安定性・直進性 2 乗り心地 3 動力性能 4 対候性?

自転車と比べて
 長所:1 漕がなくても走る
 短所:1 軽快感(加速力) 2 乗り心地 3 操舵安定性・直進性

フォールディングバイクと比べて
 長所:1 漕がなくても走る
 短所:1 重い 2 携行品を要する

 glafitは和歌山県に本社を置く日本のベンチャー企業である。2021年夏に発売を予定するGFR-02に先行試乗してきたものの、高層ビルの谷間でGPSが上手く測距しなかったので、遮蔽物のない所でGFR-01に乗り直してきた。GFR-01は2017年10月に発売した旧モデルであるが、試乗した限り動力系にほとんど違いを感じなかった。

ハイブリッドバイクの意味について

 GFR-01フォールディングバイク(折り畳み自転車)の形をした電動バイクである。原付一種として課税申告する必要があり、運転免許証の取得も自賠責保険への加入も必要となるが、グッドライダー防犯登録は義務ではない。ハンドル右側に付いているメーター内の電源を入れると始めはECOと表示される。MODEボタンを押すごとにECOMIDHIGHECOというようにループする。これは走行中にも切り替えが可能である。
 ECOモードはスロットルグリップを回してもペダルを漕がない限り前進しない。電源を落とした状態と全く同じ踏力となる実質的な自転車モードである。
 MIDモードは低出力な電動バイクである。ペダルで漕ぎ足して速度の上乗せができるので、最もハイブリッドらしさを実感できる。
 HIGHモードも漕ぎ足すことはできるが、その労力への見返りがあまりにも少ない。変速機を持たないGFR-01は、車重約18kgの自転車を漕いで登坂できるようなローギアに設定しているので、モーターで十分に加速していると、上乗せできる速度はごくわずかである。
 どのモードに切り替えて漕ぎ足しても最高速は30km/h前後に収まるので、普段はHIGHモードで走行し、バッテリーが切れたらペダルを漕いで無灯火走行してしまうのが実態だと思う。現時点では無灯火走行や歩道走行が違法となるGFR-01だが、2021年夏発売予定のモビチェン(後述)を取り付ければ自転車(軽車両)としての切り替え運用が認められる。MIDモード以外では漕ぎ足しの効果を実感しにくいし、現時点ではバイク状態のまま車道と歩道を跨げるわけではない。動力的にも法律的にもハイブリッドバイクと呼ぶにはいささかの抵抗がある。デュアルモードバイクと呼んだ方が適切ではなかろうか?

ECOmode MIDmode

HIGHmode HIGH+PEDAL

動力性能について

 80kgの負荷をかけて平地でアクセルを全開にすると、GPSは以下の速度を示した。
 まずは電量計のセグメントが3/4のときのECOモード。100mで25.5km/h、その直後に平地最高速28.0km/h(メーター表示28.7〜29.3km/h )を見た。ECOモードはモーターの力が加わらないので最高速は運転者本人の体力に依る。はっきり言って電動アシスト自転車は勿論の事、数万円で買えるような一般的な自転車よりも初速が遅くて軽快感が低い。

 つぎは電量計のセグメントが3/4のときのMIDモード。100mで10.4km/h、その直後に平地最高速10.6km/h(メーター表示11.0km/h )を見た。そこから更にペダルで漕ぎ足して27.8km/h(メーター表示29.5km/h)までは伸ばせた。

 そして電量計のセグメントが4/4のときのHIGHモード。100mで23.1km/h、200mで28.4km/h、その直後に平地最高速30.3km/h(メーター表示31.9km/h )を見た。そこから更にペダルで漕ぎ足して31.8km/h(メーター表示36.4km/h)までは伸ばせた。

 電量計のセグメントが4/4であるときが最もパワフルである。MIDモードだと電量計のセグメントが4/4のときのGFR-02でさえメーター表示で12.8km/hまでしか見ていない。3/4、2/4と減るに従い明確にパワーダウンを実感できる。速度計の誤差は計算上+2.5〜+14.5%程度。GPS計測と本体表示の同期生が怪しいから画面上は大きく差が出ることがあるものの、だいたい+5%程度に落ち着くことが多かった。どのモードで漕ぎ足そうと平地最高速は30km/h前後である。PCX ELECTRICの動力性能が原付一種並みとするならば、GFR-01原付0.5種である。試乗中は絶えずロードバイク(自転車)に追い越されていった。

航続距離について

 航続距離は公称値で25km。外気温7℃で実際に走行できたのは24.4kmだった。満充電から7km走行したら電量計のセグメントが4/4から3/4になった。そこから3km走行したら3/4が2/4になり、さらに12km走行したら1/4のセグメントが点滅をはじめた。少しずつ速度が落ちていき最後の1km強は駆動が断続的になってギクシャクして実用に耐えないものになった。そのまま走行を続けると突然電源が落ちてライトもメーターも消灯した。

 リチウムイオンバッテリーを使用しているのに電量計のセグメントは規則的に変化しない。3/4でスロットルを全開にしたとたん2/4に減り、そのまましばらく走行していると3/4や4/4に回復することもある。電量計が頼りないうえに、どんなバイクより航続距離が短い。それにもかかわらず航続距離をバイクに対する短所に挙げなかったのは、電力が尽きてもペダルを漕いで移動を続けることができるからだ。押し歩く労力はどんなバイクよりも少ないからだ。

乗り味について

 操舵安定性直進安定性は低い。14インチ小径ホイールに折り畳みやすさを考慮したハンドルのため、片手ハンドルだとふらつきやすいし、両手でハンドルを握っても立ち漕ぎでは不安定になる。これはどのモードでも同じ。発進の瞬間にペダルで漕ぎ足せばいくらか直進性は高まる。

 制動力は充分。前後ともにワイヤーを引っ張る機械式のディスクブレーキだが、車体が軽いし速度も低いからどんなブレーキでも平気だろう。

 取り回し易さは自転車並み。とにかく軽くて小さいので取り回しだけは無敵のバイクである。ハンドル中央を片手で鷲掴みして歩いてみると走行時より安定していると思った。

 乗り心地座り心地も悪い。踏破性に不利な小径タイヤを履いているし、前輪にも後輪にもサドルにもサスペンションがないからだ。エンジンからの振動が無いのと速度が出ないだけ路面からの衝撃が少なくてK-16よりマシか。この遅さでは車道外側線の内側に入って左側端に沿って走行しないと邪魔になってしまうが、排水溝やら継ぎ接ぎがあったりするとそうも行かず、白線上を走行するのが精一杯である。

 足着き性着座姿勢はサドルの高さ調整次第。一般的な自転車と同様に足着き性漕ぎ易さは相反する。車体が軽いからベタ足でなくても全く問題はないので、漕ぎ易さ・操舵し易さでサドルを調整したい。

操作性その他の装備について

 ウインカースイッチはプッシュキャンセル式ではないが、小振りで操作しやすい。
 ホーンは鳴らしても音が小さくて周囲は気にも留めてくれないだろう。
 メーターは速度、距離(ODO→TRIP)、モードを表示する。電源ボタンを押したり、後輪に付いてる鍵を開錠すると自動的にメーターが表示され、ヘッドライトやテールライトも点灯する。
 バックミラーは取り付け部分がハンドル内側に引っ込んでいてミラーに映るのは自分の腕や肩で、ほとんど後方が見えない。この反省からGFR-02ではハンドルグリップエンドに取り付ける折り畳み式のミラーに変更された。しかしこれも曲者で走行中にミラーが動いてしまう。

 バッテリーはフレームの中に入っているので交換する際はフレームを折らなければならない。オプションの二本足スタンドに交換しておけば、フレームを折っても自立安定するので交換作業がしやすい。なお、バッテリーを取り出さなくても充電できるようにプラグを差し込む穴がフレームに開いている。フレームが折れる所にパッキンの類が無いので耐候性が心配になる。

 カギは2点付属する。ひとつはバッテリーに付属する鍵である。フレームを折ってもバッテリーが落ちて来ないように、フレーム下の穴を通してバッテリーそのものに差し込むようになっており、バッテリーの落下防止・盗難防止を兼ねている。もう1点は一般的な自転車にも見られる後輪の回転を妨げるもので、ゴムキャップを外すと開錠するための差込口が現れる。指紋認証登録をすれば指タッチで施錠・開錠ができるようである。

 積載性。標準状態では何も積めないが、オプションとして前後共にキャリアを装着することができる。

モビチェンについて

 ペダル走行時は自転車と同じく歩道を走った方が運転者にとって安全であり、車道を走る他の交通にとってもストレスがない。そこで電動バイク時は原付第一種、 自転車時は普通自転車として、1つの車両が2つの法律上のカテゴリーを切り替えて運用できるようにした。この機構はMobility Category Changerを略してモビチェン(特願2020-147073)と命名された。次の要件を満たす必要がある。
 1、 電源を切るとモーターが駆動しない。
 2、 1のとき際はナンバープレートにカバーを掛け自転車であることを明確に示す。
 3、 ナンバープレートカバーの操作は、電源を切った状態で、停車中にのみ可能なものとする。

個人的感想と希望について

 自転車としても原付としても運用できるようにしたモビチェンの法的ブレイクスルーは革命的な進歩として大いに賞賛させて頂きたい。

 しかしコンセプトを欲張り過ぎたせいか、肝心の車体そのものは未熟と言わざるを得ない。バイクとしては勿論のこと、一般的な自転車にすら走りが劣るものに損害保険を二重に掛けてヘルメットを被って運用しろよ、では電動アシスト自転車ユーザーからは敬遠されるだろう。フォールディングバイクとしても重すぎるのに、ヘルメット充電器まで携行しなければならない。しかも電欠したら出来の悪いミニベロ。輪行を前提にするならBirdy(旧称BD-1)を選んだ方が幸せになれると思う。税抜138,800円というお金を払えば漕ぐのが軽いフォールディングバイクがいくつもある。私的には輪行袋に入れて持ち運べるのは12kg程度が限界、それ以上はキャスター付きのハードケースが欲しいが、本体を出した後はそのハードケースが邪魔になる。

 輪行は非電動の自転車でも難しいテーマなので、今後の夢として温めて頂き、まずは最低限、自転車としてマトモに走れる物を出して欲しい。車道を走る以上はクルマの流れに乗れないと交通の安全と円滑を害するので原付一種との切り替えではイマイチ実用性に欠ける。ゆくゆくは原付二種との切り替えができるモノを開発して欲しい。法律的にも走破性でも走れない所が無いMTBが出ればCT125と同じ値段でも売れるのでは?

 現時点では漕がなくてもいいミニベロに過ぎない。汗をかきたくないスーツ出勤時に自転車駐輪場にパーク&ライド。私の場合はそれ位しか利便性が思いつかない。

記述 2021.1.22

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