ホンダ・CBR125
JC39

 長所:1剛性感 2爽快 3照射力 4燃費
 短所:1見掛け倒し 2ハンドリング

 今回試乗したCBR125RWは2007〜2008年にタイで生産されたEU向けモデルである。CB“R”を名乗るもエンジンは単気筒である。始動はセルのみ。FIなので始動性は問題ない。

 85kgの負荷をかけて平地でアクセルを全開にすると100mで60km/h、200mで80km/h、と加速していく(メーター読み)。ギアごとの平地最高速は1速=35km/h、2速=62km/h、3速=88km/h、4速=105km/h、5速=110km/h(伏せて118km/h)、6速に至っては加速する力がまるでなく、完全に巡航用のギアである。体感的には60km/hと思ってメーターを見るとすでに68km/hを示している。速度計のプラス誤差は大きいと思う。

 エンジンは最低でも3,000回転、欲を言えば4,000回転を、元気良く加速したいなら5,000回転はキープしておきたい。エンジン回転にシルクのような滑らかさがあるのはCB125Tだが、低中速トルクとレスポンスの良さはCBR125の方が上で実用的な特性である。
 CBR125のエンジン音は加速する時は単気筒らしいが、カブやエイプなどとは明らかに別物である。減速時は単気筒にV4サウンドを混ぜたかのような音を発するのが面白かった。レッドゾーンとなる11,000回転まで爽快に回るが速度がなかなか付いて来ない。見かけ倒しの動力性能と表現することもできるし、車体剛性の高さからくる安心感だと表現することもできる。振動は9,000回転以降にビリビリと来るが大したものではなく、快適性はおおむね高い水準にある。

 比較対象区間304.7kmを走って距離計が示したのは306.0km。+0.4%の誤差があるとするならばその区間の平均燃費44.8km/Lになった。動力性能が期待外れだった分、燃費は予想より良かった。

 ハンドリングは基本的にはヒラヒラしていていいのだが、誠に残念ながら難があった。バイクを旋回させるとき、コーナリングフォースをつくるために無意識のうちに一瞬逆ハンを切るが、今回のCBR125RWはセンター付近でハンドルが急に渋くなることが頻発し、けっこう焦った。取り回しの際にもこの症状が出ることがあった。慣らし運転直後の車体なのでステアリングのベアリングが錆びたりグリスが固着するような時期でもないだろうに。

 そして6速もギアがあるのに、峠道の登りでは2速では回しすぎ3速では力不足という状況になった。このハンドリングの不具合と合わせ、スーパースポーツらしく遊ぶことはかなわなかった。

 サスペンション。フロントは柔軟性が高いが、リアは平凡な動きで路面追従性はCB125Tやエイプのプロリンクサスの方が良かったように思う。

 乾燥路面での短制動。フロントは滑らないが、前後同時に制動してもリアは滑りやすかった。マシンの性格上、加重移動量が多いのとタイヤが細いのもあるかもしれない。標準タイヤはIRC:iZ-R イーグルグリップという銘柄だった。

 足付き性は及第点。シートが高いがスリムな車体のため170?ない私でも両足がべったり接地する。軽い前傾姿勢で着座するため1時間も経たないうちに上半身を支える手が痺れはじめた。信号停止の度に上体を上げて手を休めた。シート脇も角ばっていて決してふとももに優しい形状ではないが、ケツ、ふともも、腰などよりも手が痺れるバイクだった。

 後席は意外としっかりした座面で、リアステップもタンデムグリップもちゃんとした作りなので短時間のタンデムなら十分に実用になる。後席は運転席よりも一段高い位置になり、同乗者にとって見晴しは良くなるが、重心は高くなるわ、動きは鈍くなるわ、で運転者から言わせればCBR125で2ケツしてもロクなことにならない。同乗するより運転する方が疲れが早く、やはりタンデムは短時間に抑えたい。ジェットコースター好きの女性とデートツーリングを楽しみたいのならCBR600以上をお勧めします。

 積載性。荷掛けフックは後席の前側部に1対、リアステップの付け根にもその効用がある1対、そして後方はタンデムグリップにフックする。後席の座面側面に鍵穴があり、キーを差し込んで回すと後席がポップアップして、さらに座面を外すことができる。すると左右1対のメットホルダーが使用可能となり、後席下に書類や工具を収納するスペースも登場する。それらに加えてレインパンツ1枚くらいなら畳んで入りそうだ。

 ミラーの後方視認性は良い。メーターは左から燃料計、速度計、回転計、水温計の4連。距離も含めて全てアナログ表示する。200?/hスケールでハッタリも十分だ。

 

 ヘッドライトは55Wの2灯式。ポジションランプは額の位置にある。ロービーム時は右側のみ、ハイビーム時は左側のみが点灯する。2灯が同時に点灯するのはスイッチを微妙な位置にした時だけ。55Wの光量は夜間走行で有難い。右点灯で照射範囲が右側に広いのは、右側通行する国に向けた仕様のため。右照射は右コーナーから対向する車が早く気付いてくれる利点もあるだろう。

 YZF-R125のスポーツ性とYBR125の日常性、両者の中間的なモデルという印象を受けた。エンジン回転にYBR125、GN125、エイプ以上の爽快感があり、見た目も当時のCBR600譲りだが、動力性能や前傾姿勢が中途半端であることは否めない。

2013.1.14 記述

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