ホンダ・ジョルカブ

 長所:1デザイン 2快適性 3運動性 4経済性
 短所:1パワー 2収納・積載性 3カラーリング

 ジョルカブは、ジョルノのボディとカブのエンジンを新設計フレームで合成したミッションスクーターだ。リアスイングアームやリアホイールなどは基本的にシャリーのままだが、エンジンはセル付きの4速に、リアサスペンションも性能の良いものにバージョンアップしている。

 合成したことで気になる点は2つ。?エンジンオイルの交換時にフレームやボディカバーが干渉する。(オイル給油口は移動していない)?カブよりシフトチェンジのダイレクト感が劣る。(チェンジペダルの前方移動に伴ってリンクを介した)

 4ストロークエンジンのため平地でも出足は遅い。交通の流れに乗ることは難しい。メーター内の速度範囲表示によればギアごとの最高速は1速=18km/h、2速=40km/h、3速=55km/h、4速=60km/h。登坂ではこのとおり引っ張らないと辛い。平地を普通に流す分にはだいたい15km/h、30km/h、45km/hぐらいでシフトアップしている。シフトアップはアクセルを戻す時、うまくペダルを踏めばシフトショックが出ない。

 4速化により登坂中のシフトダウンがスムーズにできるようになった。シフトダウンは4速から3速へは40km/h以下で、3速から2速へは20km/h以下で、アクセルを回したまま行うとほとんどシフトショックが出ない。

 最高速は平地で60km/h。登坂は3速でも4速でもせいぜい45km/h前後。

 燃費は、信号停止の少ない国道を負荷70kg/最高45km/hで4速巡航してみたところ、60km/Lとなった。ジョルカブはトルクが細いので3速でないと30km/h巡航は辛い。4速45km/hでも燃費はほとんど変わらないと思う。公表値は110km/L(30km/h)だが実際はどんなに努力しても70km/Lぐらいだろう。

 市街地走行では40〜50km/Lだった。この数字はスーパーカブ90と同等か、あるいはわずかに劣る。実用航続距離はせいぜい160km。ジョルカブに限ったことではないが燃料計の針があまり正確ではない。

 静寂性。アイドリング、下り坂、平地の50km/hくらいまでなら今まで私が乗ったことのあるバイクの中でトップレベルの静寂性である。特に始動直後は電気シェーバー並みに静か。これなら隣接住民がどんなに怖い人であっても遠慮無く暖気できる。平地の50〜60km/hあたりではもしかするとCD125Tの静寂性に負けるかも知れない。登坂時も回した分だけ音が大きくなる。

 フレームの頑丈さはカブにはかなわないと思うが、カブのようにエンジンの振動がハンドル、ステップ、シートを通して直に伝わることがない。カブ90では短所と指摘していた快適性もジョルカブでは長所となった。2〜3時間走りっぱなしでもほとんど疲れない。静寂性、低振動は勿論のこと、ハンドル―シート―ステップの位置関係が良く運転姿勢が極めてラクチンだからだと思う。シート形状が水平なのでポジションの自由度も高い。

 ジョルノ、ジョルノクレアと共通のフロントサスはソフトでありながらも急ブレーキでは底付きしない設計。リアサスは左右両方にあり、ワインディングでも腰が砕けないし、右旋回と左旋回とで違和感がない。

 直進安定性と旋回性のバランスもいい。例えば50km/hで走行中に突然、連続して盛り上ったマンホールに出くわしても、速度を落とさずに、おしりを左右に振るだけで簡単にスラロームして回避することができた。(ステップが低めなのであまり寝かせてしまうと地面に擦りそうになる。)もっとも、この場面、ライブディオZXの足回りとフレーム剛性ならそのまま突撃した方がいいだろうが、ジョルカブで突撃するとFサスが頼りないし、センタースタンドがフレームにバウンドしてしまう。やはり剛性感はスポーツスクーターに劣るのではないか。

 乾燥重量79kgのわりに取り回しが非常に軽い。この身のこなしと取り回しの良さは、エンジンを、スクーターのように低く、バイクのようにフレームに、搭載したことによる。ミッドシップレイアウトとは正にこれのことをいう。

 一方でヘルメットは半キャップしか入らなくなったし、足元にも荷物を置けなくなった。コンビニフックもシフト操作の妨げになるので大きな袋は下げられない。フロント・リア共に専用キャリアを別途購入しなければ何も運べないのはジョルノのまんまだ。

 カブ系エンジンの搭載により瞬発力と収納力は落ちたが、得られた経済性と運動性、そして乗る楽しさはそれを上回る。力は弱くて声も小さいが、容姿端麗で身のこなしが軽い。まるでバレリーナのような存在だ。

 このスクーターがあまり売れてないのは、収納力の他に、カラーリングに原因があると思う。男の子と女の子、どっちを狙った商品なのか分かり辛い。鮮烈なソリッドカラーで目を引くが、いざ乗ろうとすると男の子は色に悩む。白と黒はすぐ汚れるし、赤は恥ずかしい。そして3色とも安っぽい。女の子ならフルオートマチックでない事にためらうだろう。ジョルノと色を差別化してむしろ失敗しているのでは。

2002.4.21 記述

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