ホンダ・ジョルノクレア

長所:1デザイン 2快適性 3経済性
短所:1機敏性

 1999年、ジョルノ(2st)の後継機種として2台の4stスクーターが登場した。1台はペダルシフト4速オートマチックのジョルカブ。もう1台は無段変速オートマチックのジョルノクレアである。ジョルノにカブをぶち込んだだけのジョルカブは技術的に見て新しいものは何もない。対するジョルノクレアはアルミフレーム、水冷エンジン、アイドルストップ機能(DXのみ)など、完全に新設計した意欲的なモデルである。

 まずは走行性能。出足が遅い。水冷4.8psだが、4st50ccをVベルト無段変速で走らせると、やはりこんなものか、でしかない。30km/hぐらいまではなかなかのトルクがあるが、そこから先の伸びが遅い。全開でもハーフスロットルでも体感加速にあまり差がないので、速く走ろうとすることは諦め、優雅に街を流した方がこいつには相応しい。このスムーズかつサイレントかつスローな加速は、自転車からステップアップするにはいいが、2stスクーターから乗り換えたら欲求不満になるだろう。

 それでも最高速は平地できっちりと60km/hまで出る。登坂でもじわじわと速度を上げていき、普及タイプの2stスクーター並に53km/hぐらいまで伸びてくれる。

 旋回性。ライダーが腰を振るとスムーズにバンクし、問題なくカーブをクリアできるものの、やはりケツが重い。ユニットスイング式、それも相対的に重くて瞬発力も劣る4stエンジンなので、どうしてもケツがワンテンポ遅れるという感覚がある。調子に乗って車体を寝かせるとケツの重さに釣られてバランスを崩し易い。2stのようなコーナー脱出力はないし、ジョルカブのような身軽さもないので、ワインディングを楽しめるスクーターではない。

 このフロントサスはなかなかいい。見た目にも美しいし、急ブレーキしても車体を優しく受け止めてくれる。ただ、フロントの制動力をもっと高めないとクレアスクーピー等に対するアドバンテージは出てこないと思う。

 変速は全域にわたってスムーズ。常用域ではほとんど振動もない。騒音は2stモデルより圧倒的に少ないが、ジョルカブに比べると全体的に大きめである。音質的にはカブ系エンジンに似ているが、4stスクーター特有の"こもる”傾向がある。始動性はオートチョークのためジョルカブ等よりいい。

 燃費。市街地走行では40km/h 以下で流そうが、アクセル全開にしようが40〜46km/Lになった。走り方によって落差が少ない点に好感がもてる。郊外をまったり流せば50km/Lは楽勝だろう。ジョルカブの60km/L にはわずかに及ばないものの、Vベルト無段変速であることを考えれば十分に健闘している。改良を進めることで近い将来、動力性能も燃費効率もカブ系エンジンを追い越せるかもしれない。

 装備類。ヘッドライトはマルチリフレクターの40Wで夜は頼りになる。ヘッドライトカバーがメッキ塗装されており、斜め後ろの景色が写る。おしゃれなだけでなくミラーの死角を補う効果もある。ウインカー等のスイッチも操作しやすい。燃料計は省略されていて、残量が少なくなると点灯するタイプを採用している。左ブレーキレバーは前後連動ブレーキになっている。

 コンパクトな車体で取りまわしが楽。シート、フロア共に幅があり着座姿勢がいい。足着き性も良い。メットインスペースは中に凸凹があり、フルフェイスが入らない。ジェットヘルメット:アライSZ-M(Mサイズ)ならシールドを半開させることで何とか収納できたが、Lサイズ以上はどうなるか分からない。フロントバスケットやリアキャリアはデザインを壊してしまうので、コンビニフックが重宝する。

 ジョルノジョーカーをブレンドしたような優雅なスタイルは、ライブディオZXと並んで最高傑作のひとつだと思う。さすがに小汚いオッサンには似合わないが、おしゃれな女性であれば年齢を問わず包み込んでくれる懐の深さがある。単なる移動手段だったバイクを女性のファッションアイテムにした功績は大きい。

2004.5.18 記述

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