ホンダ・ジャイロUP

 ジャイロXに比較して
 長所:1積載性 2荷台安定性 3不転倒 4ミニカー登録しやすい
 短所:1居住性 2すりぬけ 3荷台衝撃

 スーパーカブでもそこそこの荷物は運べるが荷物が重くなるに従って重心バランスが極端に崩れてしまう。CD125T(絶版)だとかなり安定感が向上するものの、荷台が車体とともに旋回する以上は基本的な性格はカブと変わらない。二輪車以上、フルサイズ軽自動車未満の積載を担うコミューターとしてはダイハツ・ミゼット?(絶版)も存在するが、道路占有面積の割に積載効率は低い。

 ホンダ・ジャイロ・ピックアップトラック略してジャイロUPは、シリーズ中、唯一荷台と車体が独立している。ジャイロキャノピージャイロXが後輪ユニット部分だけ2輪になった操縦感覚であるのに対し、ジャイロUPは前半分がトラクタ、後半分がトレーラーで、それもトレーラー側の動力によって後ろからグイグイ押されるような独特の操縦感覚を持っている。ホイールベースの割にトレッドが広いのと、大きく頑強な後半部に対して初期型タクトのごとく小さく華奢な前半部を連結しているのがその感覚を生むのだろう。

 空荷でもきちんとトラクションが得られるようエンジンは荷台ユニットにミッドシップレイアウトされている。荷台面積と荷台高から計算すると合法的に積める1個の最大貨物は、縦45cm×横57cm×高さ154cm、重さ30kgとなる。小型の自動販売機・冷蔵庫が積めてしまうのである。試しに公道外で2ケツしてみたが、30kgどころか100kg積んでも動けるんではないかというほど強力な低速トルクであった。一方で平地最高速は60km/hに満たない。

 旋回性はデファレンシャルの作動が遅いのでキャビンをかなり寝かさないとコーナリングで曲がれない。直進安定性は後ろから押されてしまうという感覚があるため悪いとも良いとも言えない。狭いキャビンでバランスを取りつつ車幅も広いため“すり抜け”は特に苦手である。総じて操縦性はバイクらしくもクルマらしくもない。

 専用チェーンを後輪に巻いてダート走行してみた。その結果は頼もしいの一言に尽きる。最低地上高が低いので段差の大きいところを登破していくトレッキング的な走行には向かないが、滑りやすい所を転倒せずにジワジワ進んでいくような走行に関してはスーパーカブオフロードバイクにも勝るのは勿論のことジャイロ3兄弟の中でも別格である。3輪ともスノータイヤに交換し、チェーンを巻き、さらにスイング機構を一時的にロックできるように改造できればATV(ミニカー登録車)も不要ではないかと思える程である。以前見事に転倒してしまったジャイロキャノピーでの凍結路面、フロントが軽いジャイロUPなら転倒しなかったであろう。

 燃費は市街地走行で平均27km/Lだった。重い車体なのに2スト50cc2輪スクーター並みの燃費を維持できるのは低速トルクの強さゆえだろう。ビジネスバイクらしく2ストでありながらもエンジンの静寂性はなかなかのものだ。

 シリーズ中、最も楽しく頼もしいジャイロUPはただの原チャリではない。国産で最も小さいトラックである。個々の部品の耐久性は日々改良されているが、エンジンだけは2スト50ccゆえにスーパーカブや軽トラック並とはいかない。ジャイロ?とジャイロキャノピーは4stエンジンとなって復活したのに、ジャイロUPは未だ新型の発表がない。

  2008.7.4 追記/ 2006.1.9 記述

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