ホンダ・リード100

 長所:1低振動 2静寂性 3スムーズな変速 4整備性 5ライト 6質感
 短所:1睡魔 2攻めの走り 3すりぬけ

 今回試乗したリード100は初期のモデルと思われる。ハンドルロックが非常にやり辛かったからだ。何度もガチガチいじくってやっとロックに成功。ホンダはこれに対してリコールによる無償修理を行なっているのだが、中古車として店頭販売している車両をそのまま有料試乗車としても提供しているこのバイク屋では修理はされていなかった。おそらくリコールの届け出がある前に最初のオーナーが手放してしまったのだろう。現行モデルではハンドルロック以外についても改善している可能性があるのでご留意頂きたい。

 はじめに結論を言うと、リード100は日本人出る杭は打たれる平均主義的な採点をすれば、今まで乗ったことのある原付スクーターの中で最も優等生だった。

 外から聞こえるエンジン音はまぎれもなく2スト。しかし運転者本人にとってはエンジン音も振動も非常に少なく感じる。アイドリング時にミラーがわずかに揺れるだけ。発進加速でもエンジン音は結構静かだ。

   しかし、気になることがある。途中で何度か休憩したにもかかわらず、運転していてなぜか眠くなるのだ。これだけ居眠り運転のできるバイクは初めてだ。おそらく排ガス対策のために、耳に聞こえない周波数のこもり音が増えたのだろう。

 スタートダッシュは4ストのスペイシーには勝てるが、2ストのアドレス110・V100、グランドアクシスには負ける。しかしスペイシーのようにかったるくないし、アドレスのように荒々しくないので、使いやすさで言えばベストかも知れない。発進から最高速までとにかく変速がスムーズなのだ。今まで乗ったどのスクーターよりもスムーズで扱いやすい、そして気持ちいい。スタートダッシュで負けても全然悔しくない。

 最高速は約90km/h。80km/hまでは結構速く感じるが、その先はゆっくりである。

 10インチながらもアルミキャストホイールを標準装備しているし、テレスコピックフォークは路面の細かい継ぎ目をきれいに吸収するので、流す程度の走りなら、実に乗り心地がいい。身のこなしはスペイシーに似ていて、少しやぼったいが。

 攻めの走りをするとボロが出てくる。フロントサスで吸収しきれなかった衝撃はモロにステアリングの付け根に伝わる。ハンドルの取り付けもフレーム剛性も甘い。寝かせるほどに車体は安定感を失う。カーブ中の路面に段差があると、そのままハンドルが持って行かれそうになる。路面の粗いところではカーブ手前で十分減速しないと怖い。

   幅の広いミラーと上記した安定特性によりすりぬけは得意な方ではない。スペイシーのような極低速でのストレスはないのだが、ミラーの取り付け位置が若干低いので、クルマのミラーと接触しやすい。
 しかし、このミラーは距離感が掴みやすい

 燃費は比較的流れの速い国道300kmをキビキビ走って34.5km/Lだった。ほとんどが一人乗りでの走行だったが、4ストのスペイシーより燃費が良かった。燃料タンクは7.5L。ゆっくり流せば300km航続も可能だろう。リードに限ったことではないが、燃料計はもう少し正確になって欲しい。満タンから60km以上走行してもまだFULL表示なのだ。

 ヘッドライト40Wマルチリフレクター照射力被視認性ともに2スト原付スクーターとしてはパンテオン125に次ぐ強力なライトである。正確に測ったわけではないが、照射角度は上下に90度、左右に150度くらいありそうだ。夜間渋滞路でクルマの割り込みは受けなかった。

 居住性は狭くも広くもない。フットボートの面積が広くて運転者は股を開いていられる。後席はシートの広さに不満はないが、後席用ステップがボディ内蔵式なので、足首を内側にしまいこむようにして座らなくてはならない。また、運転者と足が接触する。
 ゴムラバーでコーティングされたタンデムグリップは握りやすいのだが、取り付け位置が低いので、両手で握ると発進時に同乗者は後ろにのけぞることになる。片方の手はタンデムグリップに、もう片方の手は運転者の腹に手を回すしかない。
 以上から、リード100の2ケツは適度な密着度がある、と表現しておこう。カップルにはいいかも知れない。

 メットインスペース。リード90はデイパックがそのまま入る広くて浅い形状だったが、リード100は狭くて深い形状になった。フルフェイスがすっぽり入る他、小型バッテリー位の箱型スペースが余っている。

 整備性。ガソリン給油口の中のフタをもうひとつ開くと目の前に点火プラグが出てくる。交換がとても楽だ。スズキも見習って欲しい。

 

 質感。ミラーの付け根・可動部、ブレーキオイル注入口、フットボードなど、水が侵入しやすい所にゴムラバーをセットして、さび対策を施している。使い捨てのスクーターではないというホンダの主張が聞こえてきそうだ。この丁寧さをスズキも見習って欲しい。

 操作性
1: ウインカー点灯ランプが左右両方にあって親切だ。しかし、ウィンカーレンズを内側にまで広げてしまえばウィンカー点灯ランプ自体が不要になるとも思うのだが。
2: ウィンカースイッチホーンボタンはもう少し左に奥にセットして、左ブレーキレバーを握りながら操作できるようにして改善して欲しい。この点についてはスズキを見習って欲しい。
3: 左ブレーキレバーの操作だけで左右両方のブレーキがかかる コンビブレーキだが、良くも悪くもないと思う。
 突然のブレーキでは、右(前輪)ブレーキが一瞬遅れるので、左(後輪)ブレーキレバーを握った時に、前輪ブレーキも効いてくれた方が安全ではある。しかし、このコンビブレーキ、左レバーをいくら強く握っても前ブレーキは半分くらいしか効かないので、やはり右レバー操作も必要だ。
 半分しか効かせないのは、例えば、雨天マンホール上のカーブブレーキをかけたとき、前輪が滑って転倒することがないように配慮したからだと思われる。
 ワインディングで前後のブレーキを微妙に調節して走ろうとすると、正直言ってコンビブレーキは邪魔者だった。左を握った状態で右を握ると、連動している分だけ右レバー操作がスカスカになっている。

 スペイシーのカッタルイ出足が嫌な人、そして攻撃的な走りをしない人には一押しのモデルである。カブ90やスペイシーと同様、ライダーを急かさないスクーターだ。

2000.11 追記/ 2000.5 記述

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