ホンダ・リードEX

 長所:1制動力 2静寂性 3経済性 4後席居住性 5積載性
 短所:1運転席居住性 2ヘルメットを選ぶ収納スペース

 

 2010年2月に登場したリードEX(税抜238,000円)は2008年1月に発売したリード(通称リード110。税抜260,000円)のマイナーチェンジモデルである。ニューモデルが登場するとEXという記号が付されて格下げされるのはフォルツァ出た後のフォーサイトと同じ扱いである。EXとはEXTRAの略号なのか?今回は慣らし運転直後の2012年モデルに試乗した。

 座席下のラゲージボックスは小型三脚をそのまま収納できる長さがあり、相も変わらず広大な面積であるが、もう数センチ深さが欲しかった。今回はMサイズ(帽体はLサイズと共通)のアライ・オープンフェイスヘルメットMZとSZ-RAM3で2個収納を試してみた。一番入れやすかった画像のような位置に並べて強引にシートを閉めつけたところ、シートが軽く変形しつつも何とか閉じることができた。しかしメインスイッチの単独操作でシートを開けることができなくなってしまった。シート後端を強く押さえつつ同時にメインスイッチをPUSHしたら何とかシートを再開することができたが、こんな使い方ではいずれ壊れるだろう。ホンダは全てのジャンルで安全と環境でトップを目指すと豪語するのなら、スネル規格をクリアーする安全性の高いジェットヘルメットを2個、きちんと収納できる原付二種スクーターを1台くらい用意してもいいのではないか?これだけの数をラインアップするのなら。

 運転席居住性着座姿勢はそう悪くなく、シートの程良い硬さが救いになっているのだが、やはり足元が狭くて1時間も走ると股が疲れてくる。フロントタイヤを10インチにサイズダウンしてでも運転席の足元を広くして欲しかった。積載スペースとしてフラットステップに拘る方もおられるが、この狭いフロアに荷物を置くと足の置き場に困る。フロア先端は傾斜角度が強くて踏ん張れないし、ピリオンステップは運転者が足を置こうとするとツルンと滑って格納されてしまう。

  

 後席にも変更点はないが、細かい点ではシートパイピングの位置が変わり、シートを全開した際にパイピングがハンドルグリップに直接触れないように改善された。ハンドルグリップもグリップのゴムデザインが変更された他、グリップエンドが装着されて転倒時にアクセルが戻らなくなる可能性を排除した。あとはマフラーのヒートガードが黒く(成形色)なったのと、フロントディスクが3ポッドに変更された点で旧型と見分けることができる。

 給油の際は燃料タンクリッドを開けてメインスイッチから給油口に鍵を差し換えなくてはならない点はPCXやリード125そしてシグナスX等に比べて利便性に劣る。燃料を目一杯給油して80km走行した辺りで燃料計はFを示し、140km辺りで4/8を、180km辺りで1/8を示していたが、時々目盛りが戻っていることがあるのが気になった。

 今回大きく向上したのがブレーキである。
従来も前後連動であったが、左レバーを握ると右レバーも機械的に引っ張られるだけで、左レバーを握った後に右レバーを握ると左を握った分だけ右の操作力がスッカスカになっていた。左も右も同じ2ポッドを共用していたのだ。今回は右レバーを握ると2ポッドが作動し、左レバーを握るとそれとは別の1ポッドが作動し、左右操作が互いに影響されずに制動力を調整できるようになった。勿論左右同時に握れば3ポッドすべてのシリンダーがローターを強力に挟み込む。
 乾燥路面で短制動を試したところ、右だけ強く握ると前輪が少し滑ってしまった。ただし滑る直前に前輪が鳴る。左だけ握ったら鳴りとともにわずかに後輪が滑った。左右同時に握ると驚くほど短い距離でピタッと止まった。その際車体は前傾するし、ハンドルもわずかに遠くなる(フレームが変形している)が、かなり頼りになるブレーキだ。

 制動力が向上した一方でブレーキロックレバーが省かれ、クルマで言うところの駐車ブレーキができなくなった。

 ブレーキ系統の変更でフロントカバー内の臓物が増えたことで、もともと少ないインナーボックスの容量が更に減ってしまった。自賠責の書類でさえ四つ折りにしないと入らないくらいだ。開閉の精度も怪しい。コンビニフックにしてもMZ/SZ-RAM3のあごひもの金具を深く引っ掛けることができない。

 サスは硬め、シートも程よく硬く、おそらくタイヤも硬いのだろう、結果として乗り心地は良くも悪くもない。運動性能はどちらかというと直進安定性重視でフロントの立ちが強い。コーナリングで徐々にバイクを寝かせていくと腰が砕けそうになる。これ以上寝かせると後輪が滑り出すだろうという恐怖が特に右旋回時に強く付きまとう。ちなみにリアサスは左側一本だけである。リード(110、EX)は峠道ではあまり気持ちの良い走りをしない。もっとも標準タイヤ:チェンシンC-922F/Rを別のタイヤに交換すれば乗り心地、制動力、旋回性の全てが変わる可能性がある。

 85kgの負荷をかけて平地でアクセルを全開にしたところ、100mで56km/h、200mで69km/h、300mで78km/h、400mで82km/h、500mで84km/h、600mで85km/h、700mで最高速86km/hに達し、その後は燃料カットのようなリミッター現象を体感した。下り坂では一瞬88km/hまで伸びるのを見た。

 燃費44.6km/Lになり、リード110とほぼ同じ数字だった。ただし比較対象区間のうち暗黒の峠道が一部崩壊して通行止めになり今回は走行条件が揃っていない。距離計の誤差も勘案していない。

 リミッター付き、足元が狭い、シート下が浅いという短所はそのままだが、他車との部品共用化というオコボレにあずかり強力なブレーキを手に入れた。フロントにカゴを装着できる点と被視認性は新型のリード125よりも優れている。

2013.8.5 記述

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