ホンダイタリア
@125

 長所:1走行性能 2居住性 3快適性 4高級感
 短所:身長175cm未満なら 1足着き性 2取り回し

 @125(アット125)は2000年に登場したイタリアホンダ製スクーターである。免許制度や交通環境が違うEU圏の製品だけあってその造りに国産のような妥協は感じられない。市街地走行から長距離・高速巡航の全てを快適にこなす。

 まずは振動・音に関して。
 125cc以上の国産系4st単気筒スクーターの例に漏れず、発進時は喉に痰が詰まったようなマッタリ感がある。以前試乗したスペイシー125ほどではないが、ハーフスロットルで発進した直後、15km/h付近で若干振動が大きくなる。また減速時に20km/h付近でクラッチが切れるのを実感できる。

 エンジン音はスペイシー125に似ている。オートチョークが戻るまでのアイドリング音は少々大きい。発進直後と全開時はそれなりに賑やかなので、静かと思うのはだいたい30〜80km/h。60km/h以上はCD125Tよりも静かに感じた。若干、音がこもる傾向があるようで、ある程度スピードを出していた方が音も振動も少ない。また、高速域からアクセルを戻すと航空機のような減速音を楽しめる。

 次に動力性能に関して。
 空冷10psのスペイシー125に対し、こちらは水冷13.7ps。どちらも排ガス対策をしているが、性能は明らかにワンクラス上。4stにしてはとてもレスポンスが良く、120kgという車重にもかかわらず、発進加速は250ccクラスのスクーターと比べても大きな引けを取らない。登坂中もアクセルを絞った分だけ力が込み上げてくる。まるでバイク自体が登坂を認識しているかのように、適正な変速をしてくれる。中間加速高速域の伸びも良い。

 最高速は登坂で90km/h、平地で110km/h。(@150は95/120km/h)直線が長ければもう少し伸びそうだった。100km/hから先はゆっくりだが、そこまでは規制前のアドレス110より早く到達するのではと思うほどだ。

 燃費は市街地走行で年間平均して28〜30km/Lぐらい。攻めて25 km/L、ゆっくり流して35km/Lとなる。燃費はスペイシー125とほぼ同じ。

 次は運動性能
ホイールサイズは前後共13インチ直進安定性は速度を上げるほど向上していく。しかしタイヤサイズは前輪の方が若干大きくて旋回性には二面性があった。通常のカーブではアンダーステア的であるが、タイトコーナーで車体を寝かせるとある角度を境にしてオーバーステア的な傾向に変化する。よってバンク角に余裕があろうともコーナーをガンガンに攻めるようなスクーターではない。どちらかというと旋回性よりも直進性を重視しているようだ。そのハンドリングを中型スクーターで例えると、フォルツァよりもシルバーウイングに近い。ソファスクーターの重厚感・直進性とスポーツスクーターの瞬発力・旋回性を折衷していると言えようか。
 ちなみに姉妹車の@150だと万遍無くトルクが太くなっており、旋回性は向上している。そして@150のタイヤをダンロップSCOOTLINE SX01に交換したら目覚しく旋回性が向上したことを付け加えておく。それでもアドレス110には及ばないが、キャラクターが違うので良しとしよう。

 リアサスペンションは左右両方に付いていて、コーナーでの踏ん張りがいい。3段階の高さ調整ができるが、よほど足の長い人でないと一番下にセットせざるを得ないだろう。アルミキャストホイールはバランサー(おもり)まで付いている。最高速でもハンドルは全くブレないし、足回りもヨレない。フレームはヤワでもガチガチでもない。足回りに一部アルミを介したフレームのためか適度なしなやかさがある。路面からの衝撃をサスペンションだけでなくフレームでもある程度吸収しているように感じた。

 制動力も良好だ。4stなのでエンジンブレーキが効き、ちょっとした減速ならスロットルグリップを緩めるだけでスピードコントロールができる。左(リア)ブレーキレバーを握ると前輪も半分くらい効かせられるので急に割り込まれた時、接触を免れるだろう。尚、左だけ・右だけ・左右両方とフルブレーキを試みたが、いずれの場合でも車輪がロックしなかった。タイヤの限界を超えない範囲の制動力である。

 13インチタイヤで最低地上高がある。マフラーやミッションケースが縁石に当たりにくい。大柄なボディにもかかわらず直進すりぬけはリード/スペイシーよりも強い。なおクルマのタイヤ交換ではホイールバランサーも移動してくれるのが一般的だが、バイクだと16インチ以上でないとほとんどの店が対応してくれないのはなぜだろうか?

 ウインドシールドがない割には正面からの空気抵抗が少ない。台風の最中に走行してみたが横風の影響もほとんど受けなかった。丸みを帯びたデザインと重さがいいのだろう。

 そして装備類
 @125は被視認性・照射力ともにトップレベルのライトを持っている。まずテールランプを含めた全てのライトがマルチリフレクターである。そしてウインカーの照射角度が左右合わせて約180°近くにも及び、真横を走行する車両からも視認されやすい。ヘッドライトは下から順にポジション、ロー、ハイという縦3灯式。しかも、ロービームは照射角度優先、ハイビームは照射距離を優先した異なる照射をする。パッシング時は双方が点灯する。毎日乗るスクーターとして夜間走行の安心感は大きなポイントである。尚、リアサス調整に対応してヘッドライトの光軸まで調整できるようになっている。

 また国産車には省略されたライトスイッチもある。勾配で対向車を眩惑しないようポジションランプのみを点灯させたり、始動・暖機運転時に消灯したりすることも可能。スペイシー125と同じく始動はセルのみなので、バッテリーを節約する意味でもライトスイッチの存在はありがたい。

 タコチャートでも入っているのか?というほど大きいメーターパネルだ。オドメーターの他、トリップメーター、水温計、燃料計、時計、オイル交換時期警告灯まで付いている。メーター内照明の光り方は乗用車のごとく高級感がある。距離感の掴みやすいミラー、操作性の良いスイッチ、頑丈なコンビニフック、駐車ブレーキ、前後連動ブレーキ、など装備がとても充実している。スタンドはサイド・センター共にあり、サイドを出した状態ではエンジンが始動できないようになっている。

 乗降性はあまり良くない。
 シートが高すぎて運転者の足付き性が悪い。170cmない人だと前寄りに座っても、両足のつま先が地面に付き、軽く足首が曲げられるかどうかという状態。前寄りに座ると旋回性能にも影響するので、背の低い人は発進直後にケツを後ろにずらして座り直そう。ハンドルグリップの太さ、ブレーキレバーのひきしろからも、このスクーターがある程度、体格の大きさを要求していることが分かる。何人かに座ってもらったが、深く腰を掛けて足がべったり地面に付いた人の身長は183cmだった。

 シートが一段高くなる後席はさらに着座位置が高くなる。後席の座面とステップの距離からも同乗者にもある程度背の高さ(足の長さ)を要求している。@125で快適な2ケツをしたいなら運転者175cm、同乗者160cmの身長は欲しいところだ。

 一方で居住性はとても良い。
 シートの長さ・厚さ・グリップ、座面と床面(ステップ)の距離、格納式のリアステップ、取っ手になるリアキャリア、、。これら全てが前後席ともに良好な着座姿勢をもたらしている。高い着座位置は前方視界も良くなる。リード100/スペイシー125の座席は狭いが、フォルツァ・フュージョンでは車体がデカ過ぎる、、、とお考えの人に@125・@150はお勧めできる。

 積載性は平均レベル。
 大型コンビニフック、メットイン、リアキャリアの3点はいずれも省略できない。メットインスペースは床面に少し出っ張りがあり、周辺もカーブしているので、フルフェイス・ジェットヘルメットを入れてしまうと後はほぼ何も入らない。アルミ製の標準リアキャリアは、荷台というよりリアスポイラ−という雰囲気である。周辺部がラウンドカットされていてるし、荷掛けフックも後半部分にしかないので、荷台としての実用性は低い。また、取り回しや2ケツの際の取っ手を兼ねた構造なので、大きなBOXは付けない方が良さそうだ。

 アドレス110の旋回性、CB125Tのエンジンフィーリング、スーパーカブ90の燃費、というようにマシンの性格上どうしても他車にかなわない点があるものの、総合力は今まで乗った原付二種でピカイチである。2009年、@125は現地のカタログラインアップから落ちている。今では一段とハイホイールなスクーター:SH125がイタリアを闊歩している。

ホンダコレクションホール @125 http://www.honda.co.jp/collection-hall/2r/at_125_2000.html

2004.1.11 一部訂正/ 2004.1.2 記述

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