ホンダ
フォーチュンウイング125

 長所:1航続距離 2着座姿勢 3直進安定性
 短所:1メットホルダー

 今回試乗した2016年式フォーチュンウイング125は、五羊−本田摩托(広州)有限公司で生産され鋒云WH125-16として販売されているモデルである。このバイクをベースにしたと思われるCB125F 教習車仕様が2015年12月から自動車教習所向けに販売されている。

 足着き性は170?ない私が跨ってステップの後方であれば両足共にベタ着きになるが、ステップの横だとカカトが少し浮いてしまう。ステップは可倒式なので脛を痛めにくい。
 着座姿勢はなかなか良い。YB125SPより4cm位ハンドルが前にあるような感じで、上体が軽く前傾した姿勢になる。膝の折り畳みもスーパーカブ110ほどきつくない。シート表皮はポリエステル100%のライディングパンツだと少々滑りやすいが、それが問題となる運転姿勢にはならない。シートクッションは少々硬めで、長時間走行で時々尻を浮かせたくなるものの、苦痛ではないし、見た目よりシート面積が広くてケツがちゃんと収まった。特に良いのがニーグリップ。走行時は125DUKEのようにしっかりと決まり、それでいて足着き時に125DUKEのように内股が痛くなることもない。総じてYB125SP程はリラックスできないが、CBR125R(JC50)やYZF-R125等に比べれば極楽である。YBR125と同様に、街乗りとちょい攻めのイイとこ取りした着座姿勢と言えよう。

 後席。シート面積は十分にある。ただし運転席と同じシート表皮であり、シートが若干前傾しているので、姿勢を安定させるにはグラブバーを両手で掴む必要がある。また、リアステップ位置が高いので、膝を大きく折る必要がある。よって長時間乗車はしんどいと思う。乗降性を含めて平均的な後席居住性だと思う。

 試乗期間中の外気温は1℃〜12℃と寒かったが、インジェクションなのでセルボタンひとつで楽に始動した。アイドリングは1,700〜2,000回転で往来していた。1,400回転を下回るとエンストしてしまうが、軽いノッキングを伴いつつも2,000回転からジワジワと再加速することができる。その一方で力強く加速したいなら4,000回転以上はキープしていなければならない。ちなみに5速4,500回転でメーターは58km/hを示す。レッドゾーンは9,000回転からだが、低速ギアでは10,000回転を振り切ろうとする勢いがある。決してパワフルではないが低回転でも粘るし、しっかり回せば幹線道路でもクルマの流れに十分付いていける。ギュイ〜ンという加速音はYB125SPに結構似ていると感じた。

 85kgの負荷をかけて平地でアクセルを全開にしたところGPSでは100mで53km/h、200mで68km/h、300mで77km/h、400mで82 km/h(ここまで22秒、ここまで4速、以降は5速)、500mで83km/h、600〜700mで87 km/h、800〜1,000mで88 km/h、1,100mで89 km/h、1,500mで90km/h(このときメーターは+10%の誤差となる99 km/hを表示)、2,500mで平地最高速97km/hを確認した。このときメーターは+9.3%の誤差となる106 km/hを表示していた。最高速がメーカー公表値の96 km/hを上回ったのは、追い風が味方したのかもしれない。

 比較対象区間(新)307.1kmを走行したところメーターは306.4kmを示した。距離計の誤差はマイナス0.2%、その区間の平均燃費は50.3km/Lとなった。今回、渋滞区間は割とじっとしていたのでYB125SPより条件は若干悪かったかも知れないが、なかなかの好燃費である。

 乗り心地は良くも悪くもなく、スクーターよりはマシというレベル。リアサスに5段階のプリロード調整機構が備わる。負荷85?は55〜110?の間ということで中央位置にしてみたが、リアが跳ねる傾向を感じた。もしも私がカスタムするとしたらリアサスからだろうか。

 エンジンを取り付けた状態で強くなりそうなフレーム形状だが、剛性に不安はなかった。角型リアスイングアームも捻じれる様子はなかった。このあたりはYB125SPより明らかに上である。

 前後18インチホイールで直進安定性は高い。走行中だけでなく停止直後、発進直後も一切グラつかない。スリムなボディと相まって直進すりぬけも得意である。フォーチュンウイング125の垢を煎じてJA07・JA10に飲ませてやりたい。旋回性も良好。ハンドルもシートも高めで倒し込みはスムーズに、かといって若干細めなタイヤとパワフルでないエンジンは、調子に乗っているとそのまま倒れてしまうだろうから、あくまで常識的な範囲で楽しみたい。YBR125のようにリアタイヤ位置が前過ぎる感覚もなく、ネイキッドとして極めてマトモなディメンションを持ったバイクだと思う。ヤマハファンを怒らせるかもしれないが、運動性能YB125SPは勿論のことYBR125より高いと感じた。

 標準装着されていたタイヤの銘柄・サイズとホイールリムサイズは、フロントがCST(チェンシン):C-910、80/100-18、1.85。リアがCST:C-6011、90/90-18、2.15である。前後ともチューブレスタイヤである。
 乾燥路面で短制動を試したところ、リアのみ強く制動するとドラムブレーキで効きが遅いのか、思ったよりも滑り出すのが遅かった。たとえ滑ってもテールの流れ方はおだやかなので、すぐにブレーキペダルを緩めることができると思う。フロントのみ強く制動しても滑らなかった。
 WET路面では、リアだけだと滑り出すのが早くなるし、テールが横に流れることも多くなった。チキンハートな私はフロントのみの短制動は滑り出す前に圧を抜いてしまった。なまじ安定しているだけにこの細いタイヤのグリップが抜けたらと思うと、怖かったんです。
 凍結防止のために縦溝が彫ってある路面では、なんとか溝に捕らわれずに走行することができた。取り立てて良いタイヤではないが、うんこタイヤでもないようだ。

 オプションとなるリアキャリアは是非とも装着したい。標準状態だと、取り回しハンドル兼グラブバーしかなく、積載手段はリアシートの上に荷物を置き、リアステップの付け根とリアフェンダーにゴムネットを引っ掛けるしかない。左側リアフェンダー付近の鍵穴にキーを差し込んでシートを外すと書類と工具が出てくる。メットホルダーも登場するが、当方のアライ:MZのDリングが通らなかった。このクリアランスではほとんどのヘルメットが引っ掛からないだろう。南京錠:アイアイVA-028を持ち歩いていて良かった。これならブレーキレバー・クラッチレバー・ミラーアームのいずれかとDリングを固定できることが多い。

 その他の装備操作性について。
 メインスイッチはシャッター付き。ハンドルをわずかに左右に動かさないとハンドルロックとその解除ができなかった。
 メーターパネル。表示はアナログで警告はランプで行うシンプルなもの。
 トリップメーターもツマミを回す機械式である。
 ギアポジションインジゲーターは、緑色のニュートラルランプとは別に、メーター中央部に深く彫り込んだパネルを設け、1〜5速それぞれの位置がバックライトで赤く点灯する。昼夜・順逆光を問わずハッキリ視認できて素晴らしい。
 燃料計はメーター上部に小さいものが付いている。目盛りが4つあるものの、300km走行しても針はFと3/4の間にあり、燃料計の存在が意味をなさないほどに13Lタンクの航続距離は最大50km/L×13L=650kmと長い。

 従来車種と同様にウインカースイッチが上、ホーンスイッチが下なので、咄嗟の時にホーンスイッチが押しやすい。ギアは1〜N〜2速の間で多少の引っ掛かりはあったが、試乗期間中に徐々に馴染んでいっているような気がした。調整しろよと言われそうだが、クラッチレバーの引きしろに遊びがほとんど無く、それでいて先端位置で3cmも握ると完全に動力を伝達しなくなる。おかげで人差し指をハンドルグリップに残したままクラッチ操作ができてしまうではないか。それとクラッチレバーを握らなくても回転合わせてペダルだけで容易にシフトできてしまう。このクラスは自動遠心クラッチの方がまったり運転できていいような気がする。

 バックミラーは横幅を抑えた五角形状。左右の張り出しが少ない割に後方視界も悪くない。歪みも少なくて綺麗に写っていた。

 ヘッドライトはOSRAM社のHS1が装着されていた。YB125SPと同じ35/35Wだが、異形レンズによる配光特性が悪いのか照射力はちょい物足りなかった。LOWビームは3〜12m位先を、HIGHビームでは上下に広がって40m位先まで照射するが左右の照射範囲はどちらも広くなく、ハンドルマウントにも関わらず暗黒の峠道では肝心のクリッピングポイントを十分に照射してくれなかった。

 中国製にも関わらず、そして最近のホンダ原付二種にも関わらず、試乗期間中に大きな欠点・欠陥・不具合に遭遇しなかった。そして運動性能も操縦性も良好である。だからこそ教習車に抜擢されたのかもしれない。同じ中国製のスーパーカブ110と比べても積載性、燃費、始動性以外に劣る点はないと思う。航続距離はクラストップレベル。それ以外でトップレベルな長所はないが、短所もあえて指摘するほどのものはない。でも何も書かないとメーカーも驕るだろうから、とりあえずメットホルダー(笑)。リアフェンダーがズレているのは画像でも分かりますよね?走行には支障ないけれど。

http://www.wuyang-honda.com/product/main.jsp?catid=47&id=92

2016.12.10 記述

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