ホンダ
XR100モタード
XR50モタード

 長所:1取り回し 2足着き性 3低速トルク 4制動力
 短所:1加速力 2照射力 3積載性 4居住性(100)

 05年2月に発売したXR100モタード、XR50モタードは、ホンダ・エイプをベースに前後輪をディスクブレーキにして、XR400を頂点とするモタードシリーズの末っ子として誕生したミニバイクである。

 100と50の違いは基本的にエンジンのみ。2人乗車が許される100には後席用ステップが装備されているが、シート幅は狭いし、シート長も50ccと同じなので、2ケツできるとしてもかなりの窮屈を覚悟しなければならない。しかし1人で乗るにはとてもコンパクトで扱いやすい。サイドスタンドを軸にして180度、車体を転回させるような取り回しを非力な女性でも楽にこなすことができる。

 車体がスリム過ぎて、男性が楽な姿勢で乗車すると自然とニーグリップが解除されてしまう。積載性もリアキャリアの装着だけが頼りである。XRに限ったことではないが、MT車はもっと荷掛けフックの数と質にこだわって積載性の向上に努めるべきだ。このままではどんどんスクーターに市場を食われ、MT車を望む人が欲しい値段で買えなくなっていく。

 50も100もエンジン特性は良く似ている。吹け上がりはとてもスムーズで、モンキーにも似た愛嬌のある回転音を楽しめる。トルクも全域フラットで乗りやすいが、いかんせんパワーが足りない。スーパーカブ50・90とほとんど変わらないのでは。最高速はメーターどおりせいぜい60km/h(50)、90km/h(100)だろう。せっかくギアが5速あって前後ともにディスクブレーキを奢っているのに、この動力性能ではねえ、市街地をただ移動するのであればクラッチを操作する“楽しさ”よりも“面倒くささ”の方を大きい。

 XR50の加速力を4stスクーターと比較すれば(どんぐりの背比べではあるが)だいたい中国産ディオ以上、スマートディオZ4(PGM-FI)未満ぐらいだと思う。普及タイプの4st50ccスクーターよりはキレのある加速をするのでまだXR50には乗る価値があるが、125ccクラスとなると少し事情が異なる。アドレスV125のような高性能スクーターが普及価格で登場しているので、1.5倍もお金を払うMT車がなぜスクーターより遅いのか?という考えも出てこよう。しかも100は50の倍の排気量があるが、体感する加速力も低回転での粘りもせいぜい3割増しぐらいにしか感じない。50も100も“速く走る”という基準で選ぶべきバイクではない。

 では、XRが見掛け倒しのスットロイだけのバイクなのかと問われれば、決してそんなことはない。
 低速トルクが強い。カタログスペックで期待する以上に低回転が強いのだ。ハンドルロックするほどの小さい回転半径でぐるぐる回ってみた。地面に足を付かずに、停止寸前の速度で、クラッチレバーを握らずに。XR50は2速で、100は3速で出来てしまう。この瞬間、マニュアル車であることを忘れてしまった。ギアが5速あるのも、非力なエンジンで高速まで引っ張るためではなく、あらゆる速度域で低回転走行を楽にするためと考え直した。加速性能に比して贅沢すぎるほどの制動力も、意図的に前後どちらかを瞬時に滑らせ、車体姿勢をコントロールするためのものなのだろう。またマニュアル車ならではの登坂力を生かし、地面を舐めるようにじわじわと坂を登るのも得意だろう。多少の林道走行雪上走行も楽しめそうだ。

2005.6.5 記述

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