イタルジェット・フォーミュラ125

 長所:1安定感 2加速力 3最高速 4視界
 短所:1小回り 2ライト 3金食い虫

 フォーミュラ125は、原付スクーター世界最強との声が高い。今回はディーラーでの試乗だったので、乗車区間は5km未満だった。

 排気音は、国産スクーターにありがちなポンポンポンなんてチンケなサウンドではなく、2ストスポーツ本来のピーキーなパア〜〜ンパア〜〜ンというサウンドだった。

 100kgを超えてる割には取り回しは重くなかった。ボディサイズは大柄。しかし、ハンドルの幅やステップボードの幅が意外に狭いので、すりぬけや足付きの妨げにはなっていない。シート位置が高く、身長170cm未満の私だと地面に足をべったりと付くことはできなかったが、代わりに前方視界はとても良かった。

 後方視界も良い。立体感があって後続車両の距離がつかみやすいミラー鏡面。また、高めに設置することで、左右ミラー間の幅をあまり広げずに視界の広さを提供している。さらに、アイドリング時でもミラーの振動が小さい。走行中に後続車両のナンバーを読み取ることもできた。すりぬけと視界を両立したミラーだ。

 エンジンは高回転型のようで、平地40km/h以下だと2ストスポーツ特有ののどが乾くような排気音がする。正直もっと回したくなってくる。40km/hを越えた辺りでようやく目覚めたかのように排気音が変化し、迎撃体制に移行。そこから先のスロットルで得られるニ次曲線的な加速感は、はっきり言って同クラスの国産車では味わえない。2ストスポーツならではのピーキーなトルク特性をフルオートマチックで楽しめる。

 バイク便ライダーのチョーハツにのり、シグナルグランプリ。4スト250cc高出力系のオフ車を、いとも簡単に置き去りにしてしまった。水冷2ストローク2気筒113.5cc15psのエンジンは伊達じゃない。わずか200mという短い信号区間でもあっという間に七、八、九、、と加速する。

 アクセルを全閉にする。2ストらしくエンジンブレーキが弱く、惰性だけでかなりの距離を流すことができる。強烈な加速と惰性時の静けさ。全開か全閉か、アクセルをスイッチのように使うのがこいつには相応しい?

 最高速はオーナー氏によれば110〜120km/h。少しいじって130km/h。この加速と最高速ならば、125cc以下のスクーターで最強であることは勿論のこと、ランナー200/ドラッグスター180以外なら250ccクラスでも互角に戦えるかも知れない。

 もっとスゴイと感じたのが直進安定性。スピードメーターの針が全く動かないような速度で、足を付かずに、リアブレーキで調整せずに、ハンドルに神経を集中させずに、全くふらつかずに、走り続け、、いや、歩き続け、、いやもっと遅いから、、安定し続けることが可能なのだ。(道交法では二輪車は足を付かないと一時停止とはならないので、念の為)でもハンドルをめいっぱい切った状態での小回りに神経を使う。

 カブ90やアドレス110よりもはるかに安定している。もしかしたらスポーツバイクよりも安定感があるかも。これには、太いタイヤ、低い重心は勿論のこと、独自のステアリング構造を持っていることが功を奏しているという。フォーミュラで峠を攻めたら、さぞかし楽しいだろう。

 ブレーキもイイ。狙った位置にきちんと止まれるし、制動時に車体がすごく安定しているので、急制動でもリラックスしていられる。

 一人で走りを楽しむ為のスクーターだから、目をつぶる事なんだろうが、居住性について若干気になったことがある。
1:後席の座面が後ろに傾斜している。
2:タンデムグリップが樹脂製で、取り回しで掴むときにもグニャっと曲がること(剛性的には問題ないらしい)。
3:後席がかなり高い位置にあるので、女性を乗せるには一苦労かも。
 一方で、シート表皮のグリップは良かったし、小さいながらも格納式の後席用ステップも付いていた。

 メットインスペースはかつてのヤマハスクーターのように、球体形状なので、ヘルメット以外の収納はかなり制約されよう。

 一見すると2灯式に見えるライトだが、ライトレンズは1つで、バルブが3個入っている。ハイビーム用で2灯、ロービーム用で1灯、それぞれ別のバルブが点灯する。しかし、肝心の照射力25Wと弱すぎる。ウインカーの音が鳴らないのも気になる。

 燃費は市街地で約17km/Lだという。某誌のツーリングレポートではもっと悪い数字だった。速い分だけ燃費も相応に落ちる。これでは10Lの容量を持ってしても150km航続できるかどうか。

 本体価格は478,000円。推奨する輸入エンジンオイルはリッターあたり2千円。ガソリンもハイオク推奨。タイヤは前11、後12インチという特殊なサイズ。また、大きな声じゃ言えないが、違う販売店のマークが付いたドラッグスター180が修理に持ち込まれていた。どんな経緯で持ちこまれたにせよ、イタルジェット車の整備には特別な技術や工具が必要なのかも知れない。ということで、フォーミュラ125の購入と維持には国産車の倍以上にカネがかかると覚悟しておいた方がいいだろう。でも買った人だけが常勝と所有感に満たされるだろう。

 正規ディーラーインターモトセンターのHPアドレス紹介

http://www.zenn.co.jp/imc

2000.6.14 記述

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