タイカワサキ・KH125

 長所:1トルクカーブ 2燃費 3着座姿勢 4取り回し
 短所:1前後制動バランス 2メーター誤差? 3騒音・振動・排ガス

 今回の試乗車は個人オーナーさんからお借りした。外装、ブレーキ、出力など多少の違いはあるもののかつては日本国内でも販売されていた“ケッチ”ブラザーである。

 左手でチョークを引きながら右足でキックして始動する。音、色、臭い、振動、全てが凄まじい。エンジンは3,000回転から実用的なトルクを発揮し、5,000回転でシフトアップしても街中を十分に流すことができる。レッドゾーンは9,500回転からだが、7,000回転以上だと騒音がかなり大きくなる。排気ガスの色と臭いについてはどの回転域でも気になる。ツーリングに行ってもKH125の後ろは走りたくない。

 最高出力16.5psという数字が示すように22psモデルと2stビジネスバイクの中間的な動力性能だ。DASH125RSほどのパンチはないが、ビジバイのようにすぐ頭打ちとなるわけでもない。低速トルクがあり、全体的なトルクカーブも穏やかだが、7,000回転以降に適度な戦闘力がある。乗りやすくて、かつ、退屈もしない、非常に好感の持てるトルク特性だ。

 最高速は130km/hくらいとのこと。1速で30km/hまで引っ張れたのでギアごとの最高速はだいたい1=30、2=55、3=80、4=105、5=130 km/hぐらいになるだろうか。但し、メーターの針と実際の速度に違和感を感じたので、某ホンダ車と並走してみたら、ホンダが50km/hの時、KHは57km/hを示していた。KH125のメーターに57/50=1.14倍ものプラス誤差があるとするならば、実際の最高速は114km/hにまで下がる。

 燃費は市街地走行で26.4km/Lだった。メーター誤差があったとしても23km/Lという期待外の数字が出た。タンク容量に余裕があるので航続距離も充分だ。

 フロントはテレスコピックサスとドラムブレーキという組み合わせ。Fサスが減衰するのとドラムブレーキが効き始めるまでに時間差があるので、初期制動が頼りなく感じる。リアもフロントと同等サイズのドラムブレーキを採用していて、急制動ではすぐに後輪がロックしてしまう。前後制動力バランスが悪いと思う。フロントにまでディスクをケチらないで欲しい。制動時は必ずシフトダウンも併用したい。

 このサスペンションは街乗りでは少し堅く感じる。加速時や旋回時の踏ん張りを重視しているのだろうか。路面の凹凸をかなり正直に拾ってしまい、ピッチングする。エンジンからも出る小刻みな振動も車体で吸収し切れておらず、快適なバイクとは言えない。

 前後18インチの細いタイヤは軽快なハンドリングをもたらしている。でもグリップが期待できずコーナーで派手に寝かせる気にはなれなかった。画像ではノーマルより広いハンドルではあるが、少ししか前傾していないので着座姿勢はとても楽だった。車体はコンパクトで軽く取り回しは非常に良い。後席も狭くはないが、この制動力で私は2ケツしたいと思わない。

 軽快な走りで緊張感のある市街地走行を楽しめるが、エンジン、ブレーキ、フレーム、サスペンション、どこを見ても新しさはない。良くも悪くも2stスポーツと2stビジバイの中間車だ。ツナギよりもジーンズが似合っている。

2003.1.7 記述

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