KTM
RC125

GSX-R125と比較して
 長所: 1操縦性と操作性の両立 2照射力 3剛性
 短所: 1足着き性 2取り回し 3騒音 4燃費

 今回試乗したのは2017年にインドで製造されたRC125である。フレーム、ホイール、エンジン等を125DUKEから引き継いで、スーパースポーツに仕立てたモデルである。ブレーキレバーとクラッチレバーに調整機構がないことや、タイヤがメッツラーからミシュランに変わっている以外は上級車:RC390と瓜二つである。

 結論から言うと、これまで試乗したことのある5台の125ccスーパースポーツのなかで、私の体格では一番攻めやすいバイクであると感じた。そればかりか市街地走行でもユーザーフレンドリーな面を持っていたのが意外であった。

 足着き性は前回乗った先代125DUKEや今回比較のために乗った現行250DUKEより良く、CBR125R(JC50)と同等かわずかに劣る程度である。股下77cmの私がRC125に跨いで片足をべったり接地させるともう片方の足はつま先が地面に触れ、少し足首を曲げられる。バイクを直立させるなら両足ともにつま先立ちとなる。問題となるのは乗降性である。もともと運転席より一段高い位置に後席があり、そこ荷物を載せている場合は乗降時の回し蹴りの角度を一段と高くしなければならない。力士並みの柔らかい股割りができないのなら、ギアイン・サイドスタンドを立てた状態でステップを踏んで跨いでしまえば蹴り損ないによる立ちゴケを防げるだろう。
 サイドスタンド・ガイドの位置もステップ付近に移動し、先代125DUKEより跨ったままでのサイドスタンド操作がしやすくなった。

 シート表皮はグリップがいいし、薄いシートクッションだが、前傾姿勢により体重が前に分散されるためか、長時間乗車でもケツはほとんど痛むことはなかった。タンクは程よく幅広で股がわずかに広がりニーグリップしやすい。先代125DUKEのように足を接地させている時も内股が痛くなることもなかった。そしてハンドルも適度に幅広で開いていて、股の開き具合とのバランスが非常に良い。車体のディメンションや着座姿勢からもたらされる操縦性の高さはこれまで試乗した5台の125スーパースポーツのなかでは個人的にはナンバーワンである。スーパースポーツというよりもむしろスポーツツアラーと呼べるような着座姿勢だと思う。

 足着き性を ラク>キツイ という順に並べると次のとおりである。 GSX-R125CBR125RRC125RS4 125>>YZF-R125

 前傾姿勢を ラク>キツイ という順に並べると次のとおりである。CBR125RRC125GSX-R125RS4 125YZF-R125

 私の体格での足着き性前傾姿勢、そして丸一日走った後の疲れ具合を基にした主観だが、日常使用にも耐えられるポジションなのはCBR125RRC125の2台だけだと思った。走りに特化してそうなKTMのバイクに対してそう思えるのが意外だった。YZF-R125は極端にヒップアップな形状のため足着き性も前傾姿勢も苦しくなっていて、人を選ぶバイクになっていると思う。YZF-R125のデザインとポジションがお好きなら、いっそのことYZF-R6にジャンプアップした方が幸せになれると思う。

 RC125は個性的な形状をもった標準フロントスクリーンである。ヘッドライト下端位置まで下がっていて、フロントカウルの一部を兼ねている。その代わりべったりタンクにへばりついてもライダーの頭部はフロントスクリーンからかなり露出してしまう。オプションでフロントスクリーンが別途用意されているあたり、風防効果よりもデザイン重視なのかもしれない。また、ハンドルを目一杯切った位置の上方にもフロントスクリーンは干渉しないので、セパハンをアップハンドルに交換する人もいるかもしれない。

 125DUKE同様に左集中スイッチ操作性が良かった。ウインカースイッチ、ホーンボタン、ディマスイッチ(ハイビームとロービームの切り替えるスイッチ)を操作するにあたってクラッチレバーを握るときの手の平(手の裏)の位置を移動しなくて済む。手の平は動かさず、親指だけを移動した際の円弧上の軌跡内に3つのスイッチが全て配置されているのである。このため、手が標準サイズ以上の人だとクラッチレバーとウインカーないしはホーンの同時操作まで出来てしまうのである。パッシングスイッチも手の平は動かさず、人差し指だけで届く位置にある。それゆえスイッチを探す必要はないのだが、ご親切にスイッチに照明まで付いている。ホーンはクルマの音に近い音色と音量で迫力があった。

 CBR125Rでも手の平を若干動かさないとスイッチに届かないが、大抵のバイクはそんなものだ。GSX-R125はウインカーやホーンを操作するために手の平を移動させてもなお、両スイッチが操作し辛い。

 RC125はスーパースポーツでありながらも、足着き性、着座姿勢、操縦性、操作性、が日常的に使用する上でも良心的に設計されている。逆に日常使用で困るだろう3つの点を紹介したい。

 1点目はニュートラルである。RC125は非常に操作性の良いバイクなのだが、変速操作に限ってはタッチが微妙すぎて1速から上げても2速から下げてもほとんどニュートラルに入らなかった。クラッチレバーが軽いので信号停止中に握りっぱなしでもいいのだが、渋滞中は左手を伸ばしてニュートラルに入れていた。今回は新車の状態から借りたので、当たりがまだ付いていなかったのかも知れない。走行150kmを超えてからたまに入るようになったが、慣らし運転を終え、エンジンを回すようになった後でも非常に入り辛く、今まで乗ったどのバイクよりもニュートラル嫌いな奴だったと断言できる。

 2点目はギアポジションインジゲーターの不調ないしは不親切。ニュートラル時はメーターパネル枠外で緑色のランプが点灯すると共にメーターパネル内で「GEAR」文字を表示し、その上で数字のゼロも表示するのだが、ニュートラル状態なのに1速表示をしたり、段数の代わりに破線を表示しつつ「GEAR」文字が点滅したりで、どのギアにあるか判定できていないのでは?という状態が頻発した。デジタルは正直なのでやはりギア精度の方に問題があるような気がする。どのギアにあっても変速中は1という数字を表示するのが尚更紛らわしいので、変速中または判定不能の時は破線表示に統一して欲しい。
 ちなみに先代DUKEシリーズのメーターユニットを搭載している現行250DUKEのメーターは変速中に破線表示をする。

 しかし今回のRC125でもニュートラル以外はしっかりギアが入るし、プチ試乗させて頂いた新車卸しのRC390に至っては1速からも2速からも綺麗に一発でニュートラルに入った。慣らし中の250DUKEは2速からニュートラルは丁寧に入れれば入るが、1速からニュートラルはかなり入れ辛かった。RC125の不調が個体差なのか精度不足なのかインドマジックなのか分からないが、購入を検討している方は一応覚悟しておいて欲しい。やはり輸入車は保証体制がしっかりとした正規ディーラーで買っておいた方がいいと思う。

 3点目は、スーパースポーツに求めるのが筋違いではあるが、積載性収納力タンデムである。
 車載工具と幾重にも畳んだ標識交付証明書くらいなら収納できるスペースが運転席の座面を外すと出てくる。良く見るとフレーム右内側にワイヤーが仕込んであるので、おっ!メットホルダーワイヤーか?と思って引っ張ってみたら燃料タンク前にあるバッテリカバーを外すためのオープナーだった。
 メットホルダー荷掛けフックなどは付いていないので、乗せるにも載せるにも後席の座面が唯一の頼りである。一見するとシングルシート風なデザインだが、グレー色の全面積でシート表皮のグリップと柔軟性がある。しかし同乗者が掴むところが前にも後ろにもないので、タンデムの際は運転者の腰に手を回すしかない。運転席は一段低い位置にあるので、運転者の腰に手を回すには同乗者も前傾姿勢になってしまう。かといって肩を掴まれると運転に集中できない。

 積載性についても、後席の形状が山形に盛り上がっているし、後席の付け根にフックがないので、荷物の固定にやや苦労する。画像はDEGNER NB-145。これのストラップを車体下に一周させただけでは後方が細くなるボディ形状のためにバッグが徐々に後方にずれてしまうので、ゴムネットをフレーム側とリアフェンダー側にフックした。この手のバイクのリアフェンダーはプラスチックだけのモノもあるので注意したい。ゴムの張力でリアフェンダーが歪み、走行振動でフックが外れてしまうことがある。RC125もリアフェンダーからナンバープレート取付箇所までプラスチックなのだが、リアフェンダー裏側がサブフレームで補強されている。そのため試乗期間中にゴムネットのフックが外れることは一度もなかった。サブフレーム補強と全面シート表皮、これが積載にあたっての唯二の救いである。

 では肝心の走りはどうか。

 キャスター角が125DUKEより立っているのが実感できる。そのため極低速域は若干ハンドルが軽すぎて不安定になる。信号停止直後もハンドルを左右に動かしてバランスを取ろうにもオフ車・モタード系のようにはいかない。やはり減速から車体を倒すまでの素早さを狙ったスーパースポーツのハンドリングで、125DUKEとは設定を変えている。

 フロントサスはこの排気量にしては相変わらず極太な倒立フォークでインナーチューブは約43mm、アウターチューブに至っては約53mmもある。リアサスは10段階のプリロード調整が可能で、中間位置にしたら体重70kgの私に丁度良かった。メインフレームは軽量化高剛性の両立に有利と言われるトラスフレームを採用している。溶接箇所が多く素人目では生産性が心配になる。絶対的なエンジン出力が小さいクラスだけに軽量化のほどは分からないが、剛性についてはコーナーで寝かせても全体がカッチリしているのがよく分かる。振動が少ないRC125の方が、むしろRC390より剛性を体感できると思う。なにせRC390の強烈なトルクと振動に耐える設計をしているのだから、125のエンジンをいくら回したところでフレームにとっては痛くも痒くもないはず。それにしても足の先端までこうカッチリしていると低μ路面でグリップの弱いタイヤを履いていたら、フロントを持っていかれるのも早いだろうな、、、と思った。
 ちなみにRS4 125も高剛性だが、旋回中はカッチリした中にも全体的に丸さを感じる。RC125は倒した四角錐(鉄塔)に跨いでいて、接地面のみが丸いという印象、、、。(意味不明)

 気になったのは運転席と後席でステップの位置がズラされている事。右側のステップは運転席の方が外側に付いているが、左側のステップは後席の方が外側に付いている。通常は前後席ともに左右均等に配置するのだが、どんな意味があるのだろう。

 乗り心地は綺麗な路面を走行しているときは気にならないのだが、凹凸のある路面を走行するとトタン(前輪)、コトン(後輪)とそれぞれ小さな衝撃を受けているのが分かる。CB125Rのように前後輪を同時にバウンドさせるほどのフラット感ではないし、GSX-R/S125のようにどんな大きさの凹凸を踏んでも平均的な衝撃に抑えてくれるわけでもない。かといって全く不快な衝撃を受けるわけでもなく、恐怖感とは無縁で淡々と走り続けるバイクである。体重に合わせてリアサスのプリロード調整をしたうえで、おそらくサーキットのような綺麗に舗装された路面での使用を想定していると思う。

 とにかくカッチリしているので挙動は分かりやすい。何もしなければシャキッと直進するし、走行中にわざとハンドルを左右に振っても手の内を越えて前輪が暴れ出すことは無い。このときの挙動はDUKEシリーズよりも落ち着いている。ケツの振りひとつでグルンと向きを変え綺麗にスラロームする。あくまで後輪主体で曲がり、前輪はちゃんと後輪の支配下にあって破綻を来すことがない。どちらかというと直進の方が得意で旋回性ディメンションの良さとタイヤのグリップで曲がっているような印象を受ける。上体(ハンドルを握る手)と下肢(ニーグリップする股)の適度な開きが、大柄な車体に身を委ねつつ、自信を持って操縦できる安心感を与えている。この点はクラスを超えている。

 車体全体をしならせて(=粘らせて)柔軟性で勝負するGSX-R125に対し、RC125剛性で勝負していると感じた。硬式テニスの薄ラケットで例えるなら、ソフトなフレームで誰が扱ってもソコソコ楽しめる、ヨネックス:R-24がGSX-S125。重心を前に移動して突っ込みやすくなった(玉が拾いやすくなった)R-30(2型)がGSX-R125。カチカチに硬いフレームは狙った所に5cmとずれることの無い正確なショットを打てる、ウィルソン:プロスタッフがRC125という感じである。RS4 125は寝かせた時と立ち上がりの時の双方の安心感が非常に高く、もはや薄ラケでは表現できない。

 見た目のイカツサとは裏腹にエンジン特性はフラットトルクで非常に扱いやかった。CBR125Rもフラットトルクだが、それにもう少し色気と力と騒音を与えた感じである。同じエンジンとされる125DUKEに乗ったときは4,000回転までは静かと感じていたが、GSX-R125に乗った後では、RC125 に“静か”なんてお世辞にも言えなくなった。むしろ“煩い”部類に入る。アクセルを捻った際のエンジン音・排気音は勿論のこと、常時ケツの下でシューシュー言っている。インシューレーター(吸気口)だろうか?またカウル内で熱が籠りやすいのか、渋滞に嵌るとすぐにラジエーターのファンが結構大きな音で回りはじめるのだ。

 騒音を 静か>煩い という順に並べてみると次のとおりである。 GSX-R125>>CBR125RYZF-R125RC125RS4 125

 RC125までは低中回転に抑えればヒンシュクを買わない程度の音で流せるが、高回転型 のRS4 125は、低回転がとても弱く、低速域で流すにも中回転まで回すことになる。深夜早朝に住宅地内を移動していると怒られるかもしれない。

 85kgの負荷をかけて上体を伏せて(もスクリーンから頭がはみ出るけど、、、)平地でアクセルを全開にしたところ、GPSは、100mで48km/h、200mで74km/h、300mで86km/h、400mで93km/h、500mで100km/h、600mで106km/h、700〜800mで108km/h、900mで111km/h、1,000mで114km/h、1,100mで116km/h、1,200mで117km/h、1,300mで118km/h、1,400mで119km/h、1,500mで平地最高速120km/hを確認した。GPSが120km/hを示すときRC125のデジタルメーターは122km/hを示していた。GPSを基準に計算すれば(122-120)/120=+1.67% と極めて誤差の少ない速度計となった。

 GSX-R125に比べるとややスロースターターな気がするが、進行距離600m地点で到達速度は逆転し、最高速も伸びている。

 半クラッチせずに、しかもエンジンをノッキングさせないで再加速することができる各ギアごとの最低速度は、1速=5km/h、2速=8km/h、3速=14km/h、4速=22km/h、5速=30km/h、6速=36km/hぐらいだった。

 ギア配置は全体的にローギアかつクロスレシオな感じでGSX-R125より早くシフトアップを要求してくる。そして5速と6速の間隔が近いような気がする。それゆえ6速にシフトアップしてもまだじわじわと速度を伸ばしていた。

 比較対象区間307.4kmを走行したところオドメーターは303.2kmを指した。距離計の誤差は(303.2-307.4)÷307.4≒△1.37%と推定する。その区間の平均燃費は37.8km/Lになり、前回試乗した初期型の125DUKEにかなり近い燃費になった。ハイオク指定なので、国産勢に比べると燃料代は少し高くなることを覚悟しておきたい。

 制動力は優秀すぎて何も言えない。
 前後輪にABSを標準装備するため、乾燥路面ではブレーキペダルだけを強く踏みつけてもリアタイヤを滑らせることはできなかった。ABS作動のキックバックはペダルの裏側を優しく叩くかのような感じで乗り手を驚かせないものだった。フロントブレーキに至っては指1本つまむだけでリニアに制動を開始し、握るほどにフロントサスがしっかり縮んで荷重を吸収してくれる。フロントはなかなかABSが作動しない。タイヤやブレーキが持つ制動力を使い切ろうという設定のようだ。ところでフロントディスクブレーキキャリパーをラジアルマウント(直角取付)する必要性がこのパワーのバイクに必要か?と問われれば、日本の市街地走行では不要であろうが、そのままレースに出場することを想定して車体設計するKTMに言わせれば必需品なのだろう。

 タイヤは台湾製造のミシュラン:パイロットストリートラジアルを装着していた。サイズは125DUKEなどと同じF:110/70R17 R:150/60R17である。例の山頂トンネル内の縦溝が彫ってある路面でも動じることなく通過することができた。

 実直な硬さのRC125、または、寝かせても軽さと丸さを感じるRS4 125の2台が125ccスーパースポーツのなかで1位、2位を争う車体性能だと思う。しかしそこに動力性能(エンジン)を加えた総合的な運動性能を比べると話が少し変わってくる。フラットトルクで扱いやすいエンジンのRC125、加速の溜めを有しつつも中高速の強いGSX-R125、低回転を犠牲にして高回転に振ったRS4 125。初中級者が安心して走れるのはRC125、高回転を維持できる上級者向けのRS4 125、足着きが良くて入門者向きでありながらも、パワフルなエンジンとスリムで柔軟な車体を持つGSX-R125は乗り手が上手いほど速く走らせられると思う。この3台は、革ツナギを着てサーキットを攻めてみたいと思わせるバイクだった。CBR125Rは若干腰が砕けやすいし、YZF-R125もエンジンパワーに不釣り合いなポジションで危うい。

 操縦性は125ccスーパースポーツの中で最もバランスが取れていると思う。ただし一般公道で走るなら125DUKEの方が変化に対応しやすい。
 着座位置は前寄りで後軸は後ろ寄り、ライダーは自分自身が重心の中に存在していることを体感できる。ここまではRC125125DUKEも同じだが、両手首と腰の三点を結ぶ直線がほぼ正三角形になっていて、重心の中で操舵でき、前後左右あらゆる方向に対してすばやく荷重移動できるのは、125DUKEの方である。RC125は上体を前に預けて安心してコーナーに突っ込んで行けるが、コーナリング速度向上に振ってしまっている感がある。先の読めない一般公道で万が一のハプニングに遭遇したら?この関係もGSX-R125GSX-S125に似ている。

 重量はほとんど同じはずだが取り回し125DUKEの時ほど軽く感じなかった。RC125は250ccクラスのスポーツバイクにようにずっしりしているように感じたのは、ハンドルが低くて取り回すのに力が要るからかもしれない。バイクに跨って接地した足でヨチヨチ移動する際も数値以上の重さを感じた。

 液晶メーターパネルは初代125DUKEに準ずるが、気になったのは燃料計である。目盛りは少々見にくいが9つある。満タンで出発して約70km走って9つの目盛りが8つに減った。そこから約50km走って7つに減り、30km走って6つに、40km走って5つに、もう40km走って4つに、今度は10kmだけ走ってもう3つに減ってしまい、しばらくすると2つに減るのではなく、給油を促す警告文字が表示され、燃料計の目盛りが表示されなくなった。そればかりか、なんと距離計も同時に表示されなくなった。MODE、SETどちらのボタンを押しても回復せず、時計・速度・エンジン回転・給油警告だけが表示される状態になってしまった。9つ目盛りを刻んでいる意味がない。燃費から逆算する航続距離は37.8km/L×10L=378kmなのに、240kmから先は距離計まで消される盲目仕様なのである。

 バックミラーはカウルマウントされていてクルマで言うところのフェンダーミラーのごとく左右の視線移動が少なくて済む。左側ミラーの鏡面が右側に比べて淵部分の歪曲が大きかった。また位置調整が綺麗に決まらないと思ったらミラーの可動範囲が左右で少しズレていた。これはカウリングの建付けが悪くてミラーアームを取り付ける位置が左右で高さ違いを生んでしまったためである。鏡面は変形6角形で、上方内側の欠けは本人の肩しか映らないし、下方外側の欠けも後続車の一部しか映らないから影響は少ないものの、できればシンプルな4角形にして欲しいと思った。表面積自体は広くてCBR125Rより良いし、GSX-R125より断然見やすい。

 ヘッドライトは2灯式のプロジェクターライトを採用している。左目が55Wのロービームで、右目が65Wのハイビーム。ディマスイッチがロービームのときにパッシングすると、ロービームに加えて押している間だけハイビームも点灯し、明るさは増幅する。ディマスイッチがハイビームのときにパッシングしても何も変化しない。デザイン的に個性的で最近流行のLED勢より頼りになるライトだが、プロジェクターのレンズ形状が照射範囲に影響しているので、55/65Wの大光量を与えるなら素直に普通のバルブとマルチリフレクターレンズを組み合わせて欲しかった。

 フロントウインカーの取り付け位置が特殊である。ミラーのすぐ下、ミラーアームに内蔵している。リアウインカーも面積が小さい。安全に直結する部分なのでもう少し被視認性に考慮して欲しかった。

 品質に関してはインドクオリティを疑いたくなる部分もあるが、個性的な外観を好み、本格的な装備を持ったバイクで腕を磨きたい人は検討する価値があると思う。

 今回、比較のために2018年モデルの250DUKEにも試乗したので軽くインプレを。

 足着き性は股下77cmの私ではちょいキツイ。バイクを直立させると両足ともつま先立ちで、先代125DUKEよりシートが高くなっていると感じた。その反面、足着きの際、股が痛まないようにタンクなどの形状が見直されていた。

 動力性能は125に比べれば凄まじく、ブレーキを急に離したり、クラッチを急に繋いだり、体重移動しなくても、スロットルワークだけで1〜3速はフロントが浮いてしまうほど強烈な発進が可能だった。高速道路の急勾配でも“ぬふわ”越えする動力性能がある。85kgの負荷をかけて上体を伏せないで高速道路の平地でアクセルを回したところ、GPSは、100mで65km/h、200mで95km/h、300mで115km/hを示した。これは前後を一般車に挟まれた状況なので全開ではない。テストコースで測ればもっと速く走れるはず。250DUKEも速度計の誤差が非常に少なかった。

 一日乗り回した燃費は満タン法で平均31.1km/L、PCX150等で測定した高速駆け上がり区間は満タン法で23.8km/Lだった。  力があるぶん振動も125より大きくなっていた。発熱量も多いせいかラジエーターのファンが作動する頻度が125よりも多く、一段と煩くなっていた。RC125で感じたインシュレーターの騒音は感じなかった。

 意外にもノック耐性は125より弱く、各ギアで、およそ1速=7km/h、2速=15km/h、3速=20km/h、4速=30km/h、5速=45km/h、6速=55km/h以上の速度を出してないと半クラッチしない再加速でノッキングを伴ってしまう。

 運動性能。ジャイロ効果が高いせいか直進性は125より高く、走行中にわざとハンドルだけを左右に振ってもそれ自体を拒否ろうとしてくる。また、走行中の重心は先代125DUKEよりやや前方に移動していると感じた。コーナー手前で十分に減速しないとなかなかコーナーでは寝てくれない。125の方がコーナーに突っ込むところまでは操縦しやすかったが、立ち上がりの加速は250DUKEの方が早い(速い)し、ラクである。

 RC390にもプチ試乗させて頂いた。

 390はスロットルを回したときの250を上回る強烈なトルクは魅力的なのだが、スロットルを戻したときの減速力も強すぎて、3,000回転以下だと低いギアでもノッキングしてしまう。このため発進停止を繰り返す市街地走行ではギアの選択が125並みにせわしなくなってしまう。振動や騒音も、もはや不快なレベルになっている。乗馬しようと跨ってみたら闘牛の背中だったというバイクなので、激しいのがお好きな方にお勧めします。

 DUKE2台、RC2台、エンジン的には単気筒3車種に試乗したが、125は振動が少なくて下道では最も快適性が高かった。ノック耐性も125が一番粘り強かった。しかしここぞというときに決定的に力不足でアクセルを捻り回す右手が腱鞘炎にならないか心配だ。

 格段にトルクが強くなる250は振動も我慢できる範囲に抑えられていて、125、250、390の中では最もバランスがいいと思う。というわけでDUKE/RCシリーズで一番気に入ったのは現行250DUKEである。ハロゲンバルブの方が見やすいし、LEDライトのDUKEは変態仮面に似ているから個人的にはナシでお願いします。

2018.6.1 記述

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