プジョー・パシフィック18

 フォールディンバイク内での長所:
  1 運動性と携帯性の両立。
  2 変形箇所の剛性感。
  3 豊富なオプションパーツ。
 ロードスポーツモデルと比較しての短所:
  1 保安部品が付けにくい。
  2 操舵安定性。

 今流行のフォールディングバイク(折り畳み自転車)っいうやつです。見ての通りr&m・BD-1の姉妹車。相違点はBD-1が7速ギアでリフレクターを標準装備しているのに対し、プジョー・パシフィック18は8速ギアでサイドスタンドと本皮製シートを標準装備している。価格はパシフィックの方が1万円以上安い。

 折り畳みの手順は、トップギアに入れて、右ペダルを後ろにし、後輪・前輪・ハンドルの順に畳み、最後にサドルを下げて完了。トップギアに入れておかないと変形中にチェーンが外れてしまうのと、右ペダルを後ろにしないと前輪が畳めなくなるのが注意点。構造上、サドルを上下に往復させなければならないが、これが硬くて時間がかかる。数分の折り畳み時間を要するが、そのほとんどはサドルの移動時間。変形頻度の多い人はサドルをすべりやすく処理することをお勧めしたい。

 感動したのは、畳んだ状態でも形状が崩れず、傷もつきにくいように設計されていること。そして、構造的に最も弱くなる変形部分を、逆にサスペンションにして剛性確保と乗り心地を両立させたこと。

 変形機構・変速機・緩衝装置、この全てを装備しながら重さは約11kg。さすがアルミフレームだ。クルマに載せるなら重さはあまり関係ないが、電車・バスに載せるなら、これより重いと持ち運びは困難となる。ちなみに輪行バックに入れてしまうと歩行の度にペダルが背中に当たって不快だ。変形ペダルを買うのもひとつの手だが、カバーしないでフレームを掴んだ方がはるかに持ちやすい。長時間快適に持ち運びたいなら、キャスターとハンドルの付いたBD-1用carringcase(16,000円)が必要となる。

 この軽さは走りにおいても武器となる。個人差もあるが、時速30km/h巡航は余裕だし、瞬間最高速度は50km/hにも達する。ロードスポーツモデルに匹敵する軽快感だ。ギア設定は全体的にローギアな印象を受ける。平地なら4速発進でも軽く、トップでも十分発進できる。勾配の軽い坂なら4速のまま平気で登り切るし、1〜3速を駆使すれば、どんなきつい坂でも登り切れてしまう。では8速より上のギアが必要かと問われれば、私はNOと答える。なぜならロードスポーツモデルやママチャリに比べて操舵安定性が悪くて、これ以上スピードが出ても危ないからだ。

 ホイールベースが長いので、18インチながらも車体の直進安定性そのものは悪くはない。だが、ハンドルの幅とキャスター角が安定感を落としている。小さく畳むための犠牲となったのだろう。直進での両手離し・旋回中の片手離しは正直怖いものがある。ロードスポーツモデル派にとってはこれがパシフィックの短所と言える。ちなみに折り畳む機会が少ない私は前輪を180度反転して取り付けている。

 乗り心地はオートバイに及ばないが自転車としてはいい方だろう。リアサスはゴムブッシュなので緩衝装置としての機能はほとんどない。フロントサスも確かに仕事をしているが、あくまで舗装路を前提とした簡易なものだ。また、チェーンがかなり下にあり、実質的な最低地上高は極めて低い。MTBのような外見をしているが、そのような走りはお勧めできない。

 シート表皮が硬すぎてケツが痛い。本皮製だからいずれオーナーのケツに馴染むのかも知れないが我慢できずにシートを交換した。デザイン的にもシートとハンドルグリップだけ茶色なのが好みに合わなかった。

 このVブレーキはヘタなバイクよりよっぽど信頼できる。ただ、オートバイと比べるとブレーキレバーの幅が十分でない。泥除け、折り畳みペダル、伸縮ハンドルポストなどのオプションの他、数々の自転車用パーツを流用して自分好みのバイクに仕立てよう。

 整備上はブレーキとタイヤがポイント。構造上ブレーキシューがホイールに接触しやすいのでまめなチェックを要する。タイヤはときどき空気を補充しなければならないが、空気を入れるにはフレンチバルブというアダプターが必要。実はこのバイク、購入後わずか30分でパンクした。修理してもらった別のバイク屋いわく『チューブの品質が悪すぎる』さすが made in TAIWAN。販売店いわく『消耗品は保証対象外です、、、』高級車としてのメンツ丸つぶれ〜!日本製チューブに交換、、。

 でもタイヤそのものはなかなかいい。99年後期モデル以降は、反射塗装されているので、夜間・横からの被視認性はとても良い。折り畳んでも干渉しないようなライト、後部リフレクター、ミラーもついでに用意して欲しい。

 なんだかんだで12万。軽いだけ・安いだけ・小さいだけ・変なだけ・のフォールディングバイクは多いが、運動性と携帯性をこれほど両立させたモデルは他にはない。

 現時点では趣味としての性質が強い高級フォールディングバイクだが、ハンドルを折り畳むだけでスリムになるという特長を活かして、省スペース車専用の無料/格安駐輪場を設置するのも、ひとつの交通対策になると思う。個人としては高級車ゆえの盗難防止対策として、社会としては放置自転車対策として、駐車すべき所に駐車するという事について、互いの思惑が一致するからだ。

2000.5.27 記述

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