スズキ・GN125

 長所: 1価格 2軽快感 3航続距離 4積載性
 短所: 1品質 2ライト

 1982〜1999年に日本でも同型のGN125が生産されていたが、今回試乗したのは慣らし運転直後の2012年式、中国生産車GN125-2(http://www.haojue.com/)である。性能・精度・材質などかつての日本生産車と同等でない可能性があることをお断りしておきたい。

 発進加速をメーター読みで表記する。85kgの負荷を掛けて平地でアクセルを全開にすると、100mで72km/h、200mで82km/h、300mで91km/h、400mで97km/h、500mで100km/h、1,700mで平地最高速の108km/hを確認した。大きめの音量とかなり大げさな速度計で速さが演出されているが、そこを差し引いてもエンジンは気持ちよく回る。さすが国内規制対象外である。絶対的なパワーそのものは4スト125ccの域を出るものではないが、日常的な走行において上まで回して楽しめるのは、このクラスだけの特権だと思う。これがDトラッカー125のように国内規制対応車だと静かになる代わりどうしても力不足を実感してしまう。

 ギアごとの平地最高速は1速=30km/h、2速=55km/h、3速=80km/h、4速=98km/h、5速=108km/hになった。回転特性は2,000回転を切るとノッキング、2,500回転からトコトコ鳴らしてゆっくり加速、楽に加速したいなら最低でも3,000回転はキープしておきたい。4,000回転までは煩くないのだが、力強さが出てくる5,000回転からは振動が増えてくる。音量は6,000回転からが騒々しい。7,000回転を超えるころにケツ下にビリビリと振動が伝わる領域を通過する。ギアごとに少し異なるが平均して8,500回転前後で回転ががくっと落ちる“頭打ち”が発生する。速度計が怪しいのでYBR125とどちらが速いか分からないが、頭打ちするまでの軽快感はYBR125に勝るとも劣らない。しかし全域に渡って振動が多めでGN125の方が早く疲れる。

 比較対象区間304.7kmを走行したところメーターは314.8kmを示した。距離計に+3%の誤差があるとするならばその区間の平均燃費は43.2km/Lになる。

 操縦性はネイキッドとアメリカンの中間的なものだった。フロントが細めの18インチでリアが太めの16インチである。発進直後から直進安定性が高く、コーナリングでフロントの立ちが強いという点はフロントホイールがリアホイールより大径なバイクに共通する性格だが、ステップはネイキッドモデルと同じ高さにあるので、コーナーでかなり車体を寝かせることができる。体重移動だけでなくオールで水中をかき回すようにハンドルも寄せたり離したりしてひらりひらりと積極的に操縦を楽しめた。ここまでハンドル位置が高いバイクもなかなか乗らないので、上腕三頭筋が少々疲れた。逆にこの高さがいいと思えたのは勾配の強い下りコーナーが連続する場面だった。強くブレーキングしても上体を起こしておけるので常に冷静でいられる。ただしあまり派手に寝かせていると腰が砕ける(リアタイヤが滑る)ことがあるので注意が必要である。

 制動力乾燥路面で短制動を試みたところ、リアだけだと割りと簡単に滑り出す。フロントは初期制動が遅いのにフロントだけでも車輪がロックした。ディスクのくせに後半が強力という意味においてドラム的な効き方だと思った。前輪は滑り出す前にスリップ音が聞こえるのですぐに力を抜けば転倒は免れる。WET路面では前後輪とも更に滑りやすくなった。PCXやDIO110で肝を冷やした濡れた縦溝路面では、タイヤが捕られることはなかった。ちなみにタイヤは中国KENDA製、サイズはF:2.75-18、R:3.50-16である。タイヤのグリップはカブ110に負けるようだが接地感はカブ110よりだいぶいいので雨天時でもそれほど怖くはなかった。

 乗り心地はカブ110より良くYBR125と同等。CB125Tや125DUKEには負ける。

 居住性。運転席は足付き性、着座姿勢ともに良好である。ハンドル位置がとても高いので否が応にも背筋はピンと伸びる。後席は一段高い位置にある。両手でリアキャリアを掴めば背筋が伸びるので運転者と体を接触させず着座できる。シートは硬めで長時間走行でもケツは疲れにくいが、運転席側の側面形状は絶壁となっており、おしりの小さい人が着座すると足付きの度にうちももに角の圧がかかるだろう。

 標準でエンジンガードが付いている。見た目にはすりぬけの障害になりそうだが、エンジンガードもステップも縁石より高く、ハンドルは平均的な乗用車のミラーよりも高く、幅を取るわりには障害にならなかった。エンジンガードを外す方も多いだろうが、ここに足をかけるとアメリカンなポジションになった。

 積載性は後席と同じ高さを保ったリアキャリアが凄く頼りになる。面積も十分にあり、フックもスクーターのように4個どまりでなく8個付いている。シートバンド(後席の持ち手)やレールも積載に活かせる。

 操作性
 始動はセルのみ。キャブ車なのでチョークレバーがある。クラッチレバーは軽くて左手は疲れないが、クラッチの繋がりが雑でミートポイントがわかり辛かった。チェンジペダル自体も踏みにくくはないのだが、当たりがまだ付いていないのか、変速し切らないことが度々あり、今ギアがどこに入っているか分かるシフトポジションインジゲーターの存在は有難かった。
 燃料計がないので、トリップメーターの存在は有難い。
 ハンドルロックがメインスイッチと独立して上下ハンドルブリッジの間、右側にある。メットホルダーも独立して車体左側面にある。
 ハンドルグリップ左側にはプッシュキャンセル式のウインカーとチョークレバー、そしてライト上下切り替えスイッチが共存する。ハンドルグリップ右側にはセルボタン、ヘッドライトスイッチがある。このヘッドライトはかなり暗い。ポジションランプなんて必要ないくらいに。

 このGN125、最大の欠点は品質にある。まだ新しいのに溶接箇所、ナットをはじめとして金属と金属が触れ合うところ、あらゆる所に錆びが、、、。モンキーのコピーバイク:ドギーなんかと同じレベルで錆びはじめている。毎週錆び落としをするくらいの気持ちでいたほうがいいかもしれない。とまあいくつか目立つ短所を抱えてはいるが、この軽快さと航続距離は下道ツーリングを安く楽しみたい人にとって大きな魅力である。GN125-2Fだとメーター周りの質感が大きく向上し、ライトもマルチリフレクターになっている。

2012.9.22 記述

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