スズキ
GSX-R125ABS

GSX-R125ABS単独評価
 長所: 1足着き性 2軽快感 3柔軟性
 短所: 1ミラー 2スイッチ 3照射力 4加速の溜め 5収納・積載性

CBR125R(JC50)と比較して
 長所: 1エンジン 2足着き性 3限界性能
 短所: 1ライト 2居住性 3収納・積載性

YZF-R125と比較して
 長所: 1コスパ 2エンジン 3足着き性
 短所: 1照射力 2バンク角?

RC125と比較して
 長所: 1静寂性 2乗り心地 3足着き性 4取り回し 5燃費
 短所: 1操縦性 2操作性 3運動性能 4照射力

RS4 125と比較して
 長所: 1低速トルク 2静寂性 3足着き性 4取り回し 5燃費
 短所: 1操縦性 2運動性能 3照射力

 今回試乗したGSX-R125ABS(DL33B、以下【R】という)は、2018年にインドネシアで製造された日本国内向けの原付二種MT車である。かつて、双子の原付二種スポーツモデル:RG125ΓWOLF125はNF13Aという型式を共有していたが、GSX-S125ABS(DL32B、以下【S】という)とは型式を分けている。

 インジェクションなので冬場でもセル始動は容易である。軽量コンパクトな車体は取り回しも良く、2速ギアでの押しがけも容易である。降雪時にアイドリングが1,000〜1,500回転付近で揺れることもあったが、ニュートラル状態でエンストすることはなかった。低速トルク(正しくは低回転域のトルク)は低出力系の125に若干負けるものの、ひとたび動き出せば半クラッチにしなくても1速メーター読み6km/hでトコトコ転がすこともなんとか可能である。このときのエンジン回転は約1,500回転であり、それを下回るとエンストの可能性が上がってしまう。半クラッチさせずに軽くノッキングさせながら再加速できる最低の速度はギアごとにメーター読みで1速=5km/h、2速=8km/h、3速=11km/h、4速=15km/h、5速=20km/h、6速=25km/hあたりだった。このときのエンジン回転は約2,000回転である。ノッキングさせずにスムーズに速度を上げたいなら、やはり3,000回転以上はキープしておきたい。アプリリアRS4 125に比べればだいぶ低回転域は扱いやすい。

 アイドリングや低回転では単気筒らしいトコトコした軽い鼓動感もあるが、常用域では2気筒車のような柔らかさとモーターのような滑らかさを合わせ持っていて、快適に、かつ退屈せずに街中を流すことが出来る。高回転まで回せば周囲も警戒するほど賑やかな排気音になるが、それでも今まで試乗した5台の4st125ccスーパースポーツの中では最も静寂性が高い。5,000回転以下に抑えていれば深夜住宅地でも睨まれることはないだろう。

 4,000〜6,000回転付近のいわゆる“加速の溜め”は平地の市街地を淡々と流す程度ではあまり感じないが、機敏に走らせようと急加速したり、著しく回転を落としたところから再加速させたり、登坂時などに現れる。“加速の溜め”を発生させないようにするのが速く走るコツになるだろうが、それも2stに比べれば難しくないと思う。

 発進加速。85kgの負荷をかけて上体を伏せないで平地でアクセルを全開にしたところ【R】(カッコ内は【S】)のGPS測定速度は次のとおりになった。100mで70(67)km/h(3速にシフトアップ)、200mで82(81)km/h、300mで91(87)km/h(4速にシフトアップ)、400mで96(94) km/h、500mで102(95)km/h、600mで105(97)km/h、700 mで107(98)km/h(5速にシフトアップ)、800 mで109(99)km/h、900 mで110(100)km/h、1,000mで111(101) km/h、1,100mで112(102)km/h、1,200〜1,300mで113(102〜103) km/h、1,400〜1,500 mで114(103〜104) km/h(6速にシフトアップ)、1,600 mで115(104) km/h、1,700mで116(105) km/h、1,800mで平地最高速117 (105〜106) km/hを確認した。GPSが117 km/hを表示していたとき、【R】本体の速度計は126 km/hを示していた。GPSを基準にすると速度計の誤差は(126-117)/117≒+7.7%になった。なお、上体を伏せた際はメーター読みで131 km/hまでは見ている。直線区間が長ければもう少し伸びるような気もする。

 進行距離ごとの到達速度を比較すると、距離が進むごとに【R】【S】を引き離すのが分かる。同じテストコースでも気象条件が全く同じではないので一概には言えないが、カウル一枚で速度が10km/h以上も変わっている。また、【S】よりも6速が伸びるような気もするが、これも風圧の影響なのだろうか。

 ちなみに【S】オーナー氏の話では、フルノーマルの【S】でも上体を伏せることでメーター読み130km/hを見たことがあるという。その後ドライブチェーンを標準RKから同社高級タイプに変更し、ハイオクガソリンを給油しただけで燃費効率と機敏性の向上を確認できたという。

 比較対象区間307.4kmを走行したところメーターは310.6kmを示した。距離計の誤差は(310.6-307.4)/307.4≒+0.29%と推定、その区間の平均燃費は満タン法で47.2km/L、本体の平均燃費計は43.8km/Lを表示していた。クルマの燃費計は“盛っている”事が多いが、【R】は満タン法より控えめな表示をしていた。燃費はわずかに【S】より良かったが、これも空気抵抗なのだろうか。

 足着き性【S】と同じで、身長170cm未満で股下77cm被服込み体重70kgの私でも両足共にべったりと接地できて、なお足をわずかに伸ばせる。ペダルとステップの間に自然と足が入り、ステップで脛を痛めることもない。ハンドルは【S】よりだいぶ下げられ絞られている。ハンドル幅は【S】が約73cmなのに対し、【R】は約69cmしかない。
 着座姿勢はどんな走り方をするかで評価は変わるだろう。最高速を引き出すために空気抵抗を極力減らしたいならば、もう少しハンドル位置を下げてもいいと思うときもあるだろうし、逆に市街地やツーリングで楽に走りたいなら、ハンドル位置はもう少し上げたくなるだろう。細身のボディは足着き性や左右に体重移動する際には有利だが、ボディの太さ・大きさに甘えてゆったりと構えて乗れる車格は持っていない。体格的にはやはり小柄な人に向いていると思う。逆に言うとボディの太さ・大きさが邪魔になるほど機敏な体重移動ができる上級者にも向いていると思う。

 ブレーキレバーとクラッチレバーをいつでも握れるように構えていると30分もしないうちにハンドルを握る両手が痺れはじめる。上体を起こしてハンドルから手を放せば痺れは収まるので、長時間走行では赤信号が待ち遠しくなった。信号が全くなく走りっぱなしとなる暗黒の峠道では両手が二回りほど膨らんだように感じた。前傾姿勢は空気抵抗を減らしたり重心を集中させて少しでも速く走るためのものである。サーキットならそれでもいい。でも一般公道を走ると、【S】に比べて疲れるうえにどうも視野が狭くなるような気がしてならない。前傾したぶん視線を上に向けなければならないからだろう。

 ちなみに私の体格ベースに前傾姿勢を(ラク>キツイ)という順に並べると、
 125DUKECB125R【S】CBR125RRC125【R】RS4 125YZF-R125になった。

 【R】で走り始めた直後は、なんでスーパースポーツはこんなにハンドルを下げるのかと思ったが、試乗を終えて自分のバイクに戻ったら、こんなにハンドルが高かったら体重が乗らないだろ、だからハンドルが不安定になるんだ、と思うほど体が【R】に馴染んでいた。YZF-R125は体重の乗せ方に気づくまで随分時間がかかってしまったが、【R】は馴染むのが早かった。CBR125Rはもっと馴染むのが早かったが、あまり楽しくなかった。比べてしまうとCBR125Rは全てが平凡でおっとりしていてやぼったいのだ。

 シートは表皮・クッションともに【S】と同じだが、体重がハンドルに分散されるためか、尻は【S】より痛くならなかった。尻と内股が疲れた【S】に比べると、【R】は専ら手の痺れだった。手の痺れを抑えるためにニーグリップに力を入れると内股に疲れがいくらか分散された。全体的にCBR125R(JC50)の方が若干楽である。

 運動性能はとても良い。走行中にわざとハンドルを左右に振ったときの前後輪トレースは力点が低いためか、【S】より違和感が少なかった。ケツを振ってのスラロームは双方共にしやすいのだが、【R】はバイクとライダーとの距離が近いため、一体感が強い。自分がバイクの中央にいると実感できるし、前輪にしっかり体重が乗るので、コーナーへの進入速度も高く出来る。【R】【S】は双子のバイクだが、走らせてみると【R】を基準に設計していると感じた。

 その一方でライン取りを修正する際はハンドルを切っての操縦もしやすいのが【S】である。【S】は体重がフロントに乗らない代わりに予め抜重が済んでいるとも言えるのである。【R】は狙いを定めてコーナリングするバイクなんだと思う。両車で迷ったら、一体感の【R】、対応力の【S】で選んではいかがだろう。

 【R】はRacer、【S】はStreetの意味と考えて差し支えないだろう。しかし必ずしも【R】の方が常に攻めやすいとは限らない。勾配の強い下り峠は【S】の方が姿勢・操縦ともに楽である。【R】の下りコーナーであまりはしゃぐとフロントが持っていかれないかビビってしまう。その一方で市街地戦でもライン取りがはっきり決まっているなら、ミラーtoミラーが約84cmある【S】よりも約78cmに収まっている【R】の方がスムーズにすりぬけられる場面も少なくなかった。

 乗り心地は少々硬めではあるものの、フロントサスはしっかり沈み込むことで急減速による荷重変化を受け止めてくれるし、リンク式リアサスも路面が大きく陥没していた所を除けば大きな衝撃を受けることが一度もなかった。リンク式リアサスは強弱大小様々な凹凸に対して平均的に対応できるサスだと思う。凹凸の大きい所を出来の悪いスクーターで通過すると、ドカッ・ベシッ・はうっ!となってしまうところを、【R】【S】だとタ・タンと何事もなく通過してしまう。実用性を半分あきらめてスポーツバイクに乗るのだから、こういう所でスクーターより優越感に浸れるようでなければ乗る価値がない。

 制動力は非常に強くて安心感もある。前後輪ともにABSを装備しているので意地悪く後輪のみフルブレーキしてもほとんど滑らせることができなかった。フロントはもう少しABSの介入を遅らせた方がタイヤのグリップを使い切れると思う。滑りやすいリアの方がABSの作動が遅かったのは【S】と同様だった。標準タイヤはダンロップ:D102を装着していた。サイズはジクサーよりワンサイズ細いF:90/80-17、R:130/70-17だった。前輪が細いから少々心配していたが、凍結防止のため縦溝が掘ってある路面でも縦溝を拾いにくかった。今回は走行距離の2/3以上が降りしきる雨のなかだった。解氷直後の路面も走行するはめになったが、さすがダンロップのDシリーズ、全く危なげなく完走することができた。D102、前後ABS付きディスクブレーキ、リンク式リアサスで足回りの安心感は高い。

 意外にも【S】との違いはフロント周りだけだった。カウルそのもの、カウル装着部分のフレーム延長、ハンドル、そしてハンドルを切った状態で干渉しないようにそれぞれに向けて設計した強化プラスチック製のタンクカバーである。両車の足着き性の良さは、ただ単に地面にべったりと足が接地するだけでなく、その際に足首がステップやペダルに当たらないところにある。シフトペダル・ブレーキペダルの位置は前傾姿勢の違いに合わせてアジャスタブルロッドの調整範囲内で【R】【S】より出荷状態で下げられている可能性はあるが、ステップ自体も、その取り付け位置も【S】と全く同じであった。ハンドルの高さがこうも違うのに双方で着座姿勢に違和感が生じない事に密かに驚いている。まあ、私ぐらいの体格に丁度良い設計なのかも知れないが。今回比較車種として名を挙げたバイクの中でGSX-R/S125だけの長所である。足着き性なんて走行中には関係のない性能かもしれないが、一般公道で使うなら足の接地点がタイヤの接地点より低くなったり滑りやすいこともあるので、予期せぬ事態に備えた余裕を持つという意味に置いて、GSX-R/S125の安心感は高い。

 【R】は走行性能は高いのだが、一般公道で運用するにあたっては、若干懸念する点がある。それはスイッチ、ミラー、ライトである。

 スイッチといってもウインカーとホーンのスイッチである。
 一般公道では突然の事態に備えて、右手はブレーキレバーを握る準備をしていたいし、増してや頻繁なシフトチェンジを要求される125ccでは左手もクラッチレバーを握る準備をしていたい。【R】は左右共に1〜3本の指をレバーに伸ばした状態だと、ウインカースイッチもホーンスイッチも押しづらかった。絞り込まれたうえに低くなったハンドルに【S】と同じ左集中スイッチをそのまま取り付けたために、【S】よりウインカースイッチもホーンボタンも押しづらくなってしまったのだと思う。画像で見る限りは押しにくいスイッチには見えないのだが。

 バックミラーはミラーアームを通してカウリングに直接マウントされている。ミラーアームは可倒式ではあるものの、前後に畳む位置と使用する位置の3箇所にしか調整ノッチがないために、鏡面の位置調整範囲が鏡面とミラーアームのわずかな関節可動範囲に依存している。この可動範囲が狭いために、鏡面を丁度よい位置になかなか持っていけない。加えて鏡面も【S】ジクサーより面積不足で有効視界が狭い。カウルマウントのため交換も容易ではない。
 ハンドル位置が高いバイクなら首を“横”に回すだけで斜め後方の安全確認ができるが、前傾姿勢が強くなると、斜め“下”に首を大きく振らないと後方が見えない。だからこそミラーはもう少し親切に設計して欲しい。それが格好悪いというのであれば交換しやすいように設計してもらい、それこそ社外品に任せればいいと思う。
 CBR125Rのミラーの方がはるかに見やすかった。【R】よりハンドルからの距離がより遠く、クルマで言うところのフェンダーミラーのごとく視線移動が少なくて済むし、可倒式ミラーアームは無段階に位置調整ができるし、そもそも鏡面がおだやかな楕円形状で良好な後方視界を得やすかった。

 LEDヘッドライト【S】と同じものが取り付け位置を変えて装着されているだけで、頼りない照射は変わらない。ハイビームのまま走っても対向車から眩しいぞ!パッシングは一度も喰らわなかった。照射範囲が左右に狭いため、走行ラインを少しずらすだけで、ハイビームのままでも対向車を眩惑させないことが出来るのだ。おそらく対向車からは【R】のヘッドライトなどLED懐中電灯くらいにしか見えてなかったのかもしれない。35Wハロゲン×2のキムコ・レーシングSのときは速攻で眩しいぞ!パッシングを喰らったのだが。

 ライト、ミラー、ウインカースイッチまたはホーンスイッチとクラッチレバーの同時操作性についてはサーキットで走るには関係のない部分だが、市街地で運用するなら無視できない性能である。 他の上級車種や原付二種スクーターを差し抑えて【R】を買わせたいのなら、軽快に走るだけではなく、ストレスなく市街地走行できるよう操縦性と操作性の両立を目指して欲しい。

 【R】はスーパースポーツだから後席の居住性とか乗降性はどうでもいいとして、収納・積載性についてはもう少しメーカー自ら手当して欲しい。【S】同様、リアシートを外して同時に収納できるのは車載工具と書類くらいである。その書類にしても開口部が狭いためにA4サイズでも四つ折りにしないと入らない。燃料タンクサイドカバーが強化プラスチック製のため、マグネットで固定するタイプのタンクバッグも受け付けない。後席とボディの間に2本のストラップを挟んで固定する類のシートバッグにしても、ストラップの間隔が接近したものでないと取り付けにくい。社外品のリアキャリア、メットホルダー、ハンドルクランプなどは全て揃えないと実用にならない。ちなみに左集中スイッチの右横にわずか12mm幅で太さ22.5mmのクランプ可能な部分があるので、南海クランプアダプターPB-04ならそのまま取り付けることができた。

 メーターは、警告はランプでエンジン回転はバーグラフで、残りの情報は全てデジタル表示である。2つのTRIP計、平均燃費計、シフトポジションインジゲーターと豊富な情報量だ。どのギアにも入ってない時は数値が表示されないし、ニュートラル時は数字の0と緑ランプの双方で教えてくれる。エンジン回転警告灯は、ならし運転期間を過ぎたら要らないと思う。
 メーター情報の切り替えはSELect、ADJust、2つのボタンで行う。SELを押し続けると、累計走行距離ODO→区間距離TRIP・A→平均燃費計TRIP・A→区間距離TRIP・B→平均燃費計TRIP・B→ODOと循環する。平均燃費計を表示しているときにADJボタン2秒押しで表示単位km/L・L/100kmの切り替えができる。また、平均燃費計を表示しているときにSELボタン2秒押しでRPMが点滅したら、ADJボタンでエンジン回転警告灯の使用(白ランプ点灯)・不使用(白ランプ消灯)の切り替えができる。エンジン回転警告灯の使用(白ランプ点灯)を呼び出しているときにSEL押しで回転縛り(5,000回転がデフォ)をする(白ランプ点滅)・しない(白ランプ点灯)の切り替えができる。機能があり過ぎて操作はやや複雑である。【S】でリセットし忘れたかと思っていた平均燃費計は、どうやら給油時に勝手にリセットされるようだ。燃料計はブレがあって多少不正確ではあるが、航続距離が長いのであまり気にならなかった。

 ヘッドライトの照射力・被視認性、積載性など、CBR125Rの方がツーリングに向いていると思う。
 路面状態の良いサーキットならRC125RS4 125の方が本格的な車体だし、YZF-R125の方が攻撃的な運転姿勢だと思う。
 GSX-R125の存在価値は、凍結・降雪・ダートを除き、ほぼ路面を選ばない柔軟な足周りと軽快な身のこなし。静かな低回転から官能的な高回転まで満遍なく回るエンジン。コスパ(本体価格、燃費、維持費)の高さ。の3点にあると思う。安全な走りのスポットを見つけて腕を磨くには良い選択だと思う。
 実はトリシティ以来のコミューター・オブ・ザ・イヤーにGSX-R/S125CB125Rの3台を推挙しようと思っていたがいずれも保留にしている。推挙する基準は、1:革新的であること、2:致命的な欠点がないこと、にしている。一般公道向けのモデルでこの照射範囲はないだろうというのがGSX-R/S125を、ギア抜けするスポーツバイクなんてふざけんなというのがCB125Rを、保留にした理由である。

 ところでアプリリア・RS4 125にもプチ試乗できたので、簡単に紹介したい。

 非常に賑やかな(騒々しいとも言う)エンジン、倒立フロントフォーク、4ポットピストンで制動するフロントキャリパーはラジアルマウント。アルミフレームに左右非対称リアスイングアーム、前後ステンメッシュホース。RS4V 1000と比べても全く見劣りしない大柄で本格的な車体を持っている。

 ブレーキレバーはハンドルグリップから近く、指2本がけ状態をキープしてスロットルと同時操作するのがラクだった。ギアもスコンスコン気持ちよく入る。街乗りするにはニュートラルランプはもう少し目立たせてほしい。ミラーは鏡の面積はあまり広くなく、鏡面とミラーアームが一体化しているので、カウリング取り付け位置でミラーアームを直に動かすことで鏡面の位置調整を行うが、可動範囲は広いとは言えない。ヘッドライトはハロゲンバルブを3灯持ち、ロービームで35Wバルブの左右2灯が点灯し、ハイビームで55Wバルブの中央1灯が点灯する。

 足着き性は良くも悪くもない。170cmない私が片足をべったり地面に接地させるともう片方の足はつま先を接地して足首が少し曲がる程度である。前傾姿勢【R】よりややキツイがYZF-R125よりややラクで、ニーグリップする車体の適度な膨らみと重量感はCBR125R以上で、どっしりしつつも車体は軽いのである。仮にコーナリングに失敗して転倒したとしても、ツナギやプロテクターを身に着けていれば大丈夫だろうという妙な安心感さえある。この安心感は戦闘力に寄与すると思う。最高速や燃費などは測定できていないが、高回転を維持しなければならないので、必然的に国産勢より燃費は劣るだろうが、その気にさせる車体とエンジン音が最高速への期待を高める。

 運動性能は大変すばらしい。さすがに停止寸前はハンドルが軽くなるものの、極低速域から直進安定性は高いし、旋回性もリア主体で思いどおりのカーブを描ける。前傾のキツさはYZF-R125に近く、車体のどっしり感はCBR125Rに近く、旋回性の良さはRC125に近く、低速域の安定性は【R】に近いと感じた。この車体構成と運動性能を考えればRS4 125の税抜き約48万円は決して高くないと思う。

 RS4 125の短所は4st125ccであること。正直この車体に4st125cc では勿体無い。
 YZF-R125【R】より低回転が弱く、発進は必ず1速で行いたい。3,000回転くらいでトコトコ流すということはほぼ不可能である。最低でも5,000回転以上、欲を言えば7,000回転くらいをキープしていないと機敏な加速を得られない。ストップ&ゴーの多い市街地走行では、ギアが今1速なのか2速なのか3速なのか、確実に覚えていなければならない。4速以降は1段間違えても加速するのを待てばいいが、停止寸前とかタイトコーナーの立ち上がりでギアを1段間違えるとエンストするだけでなく、下手をすると転倒しかねない。中間域で速度計の数字が急激に増える領域があるものの、かといって二次曲線的な加速というほどパワフルでもない。パワーバンドに入って加速しはじめたらすぐに11,000回転のレブリミッターに当たってしまう。猛々しいエンジン音と頻雑なシフトチェンジを要求する点で穏やかな2stという感じだった。

 【R】の“加速の溜め”などRS4 125の低回転の弱さに比べればカワイイもんである。【R】も回してナンボのバイクだが、RS4 125は回さないと始まらないのだ。市街地走行でも常時バインバイン言わせるくらいでないと機敏に走れない。うるさいから早朝深夜の住宅地内での走行は控えたい。125ccという小排気量エンジンを積んでいるから【R】と同じ土俵で比較できるものの、仮にそれぞれ同じ車体により大きなエンジンを積んだバイクで比較すれば【R】ではRS4 125には全く敵わないと思う。【R】はせいぜい200cc位までの車格、RS4 125は600cc位のエンジンが載っていても全く不思議ではない。【R】は小排気量に丁度良い車体を持っているからいいのである。

2018.6.1 記述

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