MCC・スマートK

 長所: 1デザイン 2衝突安全性
 短所: 1AT 2乗車姿勢 3価格 4右ハンドル車

   今回はダイムラークライスラーでの試乗。試乗車は左ハンドルの小型規格“スマートクーペ”。誠に残念ながら軽自動車規格のスマートKの試乗車は用意されていなかった。

 エルクテストでの転倒を踏まえて改良しただけあって、旋回性は思ったより良かった。ホイールベースの短さや車高の高さを感じさせない自然なロール。600ccのターボエンジンにより加速性能も十分だと思う。フロントガラスの左右淵が釣りあがっているので、前方距離感が掴みにくいのではと心配していたが、ボディサイズが小さいのと、試乗コースが広かったため、視界についての欠点は見つけられなかった。、、、それにしてもデザインがすばらしい。このカタチのクルマをこれ以上かっこ良くデザイン出来るだろうか?、、、、以上、誉められるのはここまで。

 スマートは座った瞬間に違和感を覚える。臓物を下に閉じ込めたため、外見から想像するよりも床が高く、両席ともに、ひざを伸ばして足を前に投げ出すような乗車姿勢になる。湯船に浸かるようなポジションだ。足を前に投げ出した状態なので、ペダルにも違和感がある。特にブレーキペダルの方は“足で踏む”というよりも“つま先を伸ばし切る”ように結構奥まで踏み込まないとブレーキが効いてこないように感じた。試乗の際にはシートの前後調整位置にはくれぐれも気を付けて下さい。

 ダイヤルを回してシートバックを前後調整するのだが、可動範囲が狭い。シート高調整もできないし、ハンドルのテレスコピック/ティルト調整もできない。時間をかけても運転姿勢がしっくりと来なかった。

 右ハンドル車の場合、さらに運転姿勢が悪くなる。右前輪のタイヤハウスに干渉しないように、両ペダルが左寄りにオフセットされているからだ。まるで新規格軽ワンボックス(サンバーを除く)だ。ブレーキと思って踏むとそこにはアクセルがある。

 助手席に座ると足元フロアが運転席よりも手前に出っ張っている。座席をかなり後ろまで下げなければ落ち着かない。これは右ハンドル車、左ハンドル車に共通する。運転席との距離が近く、助手席に座ると運転席側の腕の置き場にも少々困った。丁度いい場所に何か握るものがあるなと思ったら、それはサイドブレーキだった。

 走行しての不満点は、ATの出来の悪さに尽きる。自動モードにすると変速の度に身体が大きく前後に揺さぶられる。スーパーカブでアクセルを回したままシフトアップしてもこんなに揺れることはない。シフトアップの瞬間にアクセルを緩めたいのだが、シフトタイミングが分かり辛い。

 手動モードに切り換えてみた。メーター内に『↑』マークが点灯してシフトアップを促される。しかしシフトレバーを操作してもすぐには変速してくれない。かなり遅れてシフトアップするのでやはりアクセルを緩めるタイミングが取りづらい。ギアが6速あって毎回これだけ遅れるものだから変速操作だけでもかなり神経を使う。また、手動モードでもシフトダウンは自動でやってしまう。百歩譲っても“慣れが必要なAT”とコメントしておく。、、いや、そもそも慣れが必要なものをATと呼んでいいのだろうか?ちなみにこのATはクリープしないので坂道発進に気をつけましょう。

 スマートのウインカーレバーはハンドルの左側に付いている。試乗車は左ハンドル車だったので左ウインカーでも違和感はなかった。しかし右ハンドル車にまで左ウインカーレバーを組み合わせるのは怠慢以外の何物でもない。とっさの時に誤操作する恐れがある。特に国産車のセカンドカーとしてたまにしかスマートに乗らない人が。

   ペダルオフセットと左ウインカー。これが気にならないのは左ハンドル車だ。しかし軽自動車としての維持費を享受できるスマートKに左ハンドル車の設定は今のところない。スマートKは輪距が狭く、タイヤサイズも細いので、スマートクーペより旋回性も悪いと思う。ダイムラーでスマートKの試乗車を用意したくない理由が分かる気がする。左ハンドルの軽規格が欲しい場合、並行輸入業者からの購入となる。

 眺めてうっとり、乗ってがっかり。スマートに対する私の正直な感想です。スズキ・PU3の発売が待ち遠しい。

2002.2.8 試乗記追加/2000.8.16 記述

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