スズキ・ツイン
ガソリンB

 長所: 1燃費 2小回り
 短所: 1視界 2価格

 試乗したのは03年式初期型ガソリンB。重量が600kgしかないので動力性能は3ATでも必要十分。若干、クリープが強いかなという気がしたものの、シフトショックはほとんど気にならなかった。

 スズキ車としては珍しくハンドリングがいい。低速・小回りの際はアルトのように軽くなり、直進時はエスクードのように重くなる。細いタイヤを履く割にハンドルはブレひとつ感じなかった。

 扁平率の高いタイヤだから仕方ないが、旋回ではスマートクーペより大きくロールする。しかし減速した分だけロールも小さくなる、とても分かりやすい動きだ。少なくとも私は不快に感じなかった。どうしても不安な方は135/80R12から155/65R13あたりにインチアップしてみてはいかがだろう。

 65km/hまで加速してみたが直進性にも不安は感じなかった。エンジン音も気にならないレベル。結論としては市街地走行であればスマートクーペより運転しやすく快適だと思う。

 運転席。ごく短時間の走行であればシートの大きさや形状に特に不満はない。シートバックは通常位置から約5°ずつ後傾していく5段階くらいの調整。あくまでポジショニングのレベルであり、リクライニング機構と呼べるものではない。アクセルペダルもブレーキペダルも左に寄っているので、ペダルが踏みやすくなる所までシートをスライドさせたら一番後ろになった。大柄な男性だと好みの位置にできないかも知れない。助手席。シートバックは水平・通常位置・約10°の後傾、という3段階調整しかない。前後スライドもできないが、特に不満はない。

 さすがに室内横幅は我慢ギリギリのサイズだが、フロントガラス(Aピラー)が前方にあり、前方は空間的余裕がある。スピードメーターやエアコンがインパネ中央に集中しているのも開放感に寄与しているだろう。シフトレバーの手前=インパネ中央の下は空間に余裕があるので、将来的にはコラムシフトAT(左右ウォークスルー)+ベンチシート仕様も出てくるかも知れない。

 ツインは視界に対する配慮が足りないと思う。

 まず前方視界。ボンネットがワイパーアームに隠れて見えない。確かに数字上は無敵の最小回転半径3.6mだが、実際の小回り性能は車両感覚に優れるサンバー(ホイールベース1885mm)の方が上である。例えばの話、“アルトは無理だがツインなら何とか入る”という敷地を持つ人がいたとしよう。フェンダーミラーフェンダーポール(フェンダーマーカー、フェンダーランプ等の名称もあり)も設定していない事を知ったら、このお客さんは電動ミニカージャイロキャノピーに流れてしまうかも知れない。スズキとしては、傷が目立たない非塗装バンパー(=ガソリンA。他は簡易塗装とのこと。)だから遠慮無くコスってくれ、ということなのだろうか。

 次にドアミラー。初期型のはカプチーノ用とのことだが丸くて小さくておまけに取付位置も後方で非常に見にくい。ツインは全長が短いせいか、これほど短いノーズにも関らず、真横からだとノーズが長く見えてしまう。こんなカタチなら車両先端から手が2本(=フェンダーミラー)にょきっと伸びていてもデザインを壊さないと思う。

 PU3コミューターからツインになって新設されたリアクォーターウインドー。運転席側はまず要らない。助手席側も助手席シートバックにすっぽり隠れるので、助手席を倒さない限り何も見えない。視界、デザイン、製造コスト、いずれの面からもリアクォーターウインドーは省略していいと思う。ハイブリッド車のバッテリースペースを確保するためなのか、リアガラス面積がとても狭い。これだけ小さいクルマにもかかわらず、前方、斜め後方、後方、いずれも満足のいく視界ではない。

 スマートでは気にならなかった視界に対する不満がツインにはある。この差を分けたのはボディ形状だと思う。フロントノーズのないスマートはAピラーのカーブと水平線の接点が車両先端であることが感覚的に分かるので、仮にインパネが邪魔だとしても何とかなるものだ。また同じドアミラーでも取り付け位置がより前方になるので、視線移動が楽になる。

 くどいようだが、フェンダーミラーフェンダーポールも設定しないのはメーカー自ら“空いた隙間にもう1台”というお客さんを逃がすようなものだ。

 ラインアップ、装備、価格の組み合わせにも納得がいかない。ガソリンAエアコン無し(98,000円で後付けが可能)、MT車のみ、ボディカラーは白のみ、というビジネス仕様。“49万円”(2004.1.9から55万円)で客を釣ろうという下心が見え見え。

 ガソリンA以外のボディは青・黄・赤という信号色となる。に標準のホイールキャップといい、いかにも幼稚園児が喜びそうなデザインである。(2004.1.9からガソリンBに限り+2万円でシルバーなどの色を選択可能になった。)

 ハイブリッド車積載性だけでなく衝突性もワンランク劣るので気が引ける。しかも100円/Lで計算すると50万km以上走行しないと価格差を回収できないので、よほど環境意識の高い人か公官庁でなければ買わないだろう。いや、環境効果のないクルマに血税を使うのはやめて欲しい。

 ハイブリッドA。129万円も出すのなら、もう10万円出してエアコン・キーレス・パワードアロック等を付けないわけがない。国産AT車トップレベルとなる34km/Lという数字のためだけに存在しているようなもの。

 今回試乗した最も一般的と思われるガソリンBだが、84万円は高過ぎる。仮にアルト並みの実用性があるとしても、70万円(※)に収まらなくてはならない。後から登場したAT車の廉価版:ガソリンV(75万円)もまだまだ高い。

(※)N-1(3AT)753,000円−ラジカセ22,200円−UVカットガラス?円=730,800円未満。
   Vs(3AT)645,000円+安全装備50,000円−UVカットガラス?円=695,000円未満。

2003.2.8 記述

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