スズキ
アドレスV125S
アドレスV125

 今回試乗したのは慣らし運転直後のスズキ・アドレスV125(型式CF4EA)の2016年式モデルUZ125L3(以下L3という)とスズキ・アドレスV125S(型式CF4MA)の2016年式モデルUZ125SL3(以下SL3という)の2台である。既存車種であるアドレスV125シリーズに再び試乗したのは、2017年に生産終了との噂が出ているので、新車実売価格が2〜3万円も異なる2台のどちらがお買い得か改めて判定するためである。前回扱ったGK9SL0との比較なら3万円高くてもSL0を推すが、今回の試乗ではどちらでもいいのではという結論に達した。というのも外見も性能数値も変わらないが、廉価版であるL3のフィーリングが改善されていたからである。以下、項目ごとに比較する。

 まずは加速力
 SL3。85kgの負荷をかけて平地でアクセルを全開にしたところGPSは100mで55km/h、200mで67km/h、300mで75km/h、400mで79 km/h、500mで82km/h、600mで84 km/h、700〜800mで85 km/h、900〜1,300mで86 km/h、1,400mで87 km/h、1,500mで89km/h、2,500mで平地最高速94km/hを示した。メーター読みであれば下り坂では105km/hから先も伸びそうだった。

 L3。85kgの負荷をかけて平地でアクセルを全開にしたところGPSは100mで69km/h、200mで77km/h、300mで82km/h、400mで83 km/h、500mで85km/h、600〜1,500mで87km/h、2,500mで平地最高速92km/hを示した。このとき速度計は100 km/h を示していた。GPSを基準にすると速度計の誤差は(100−92)/92=+8.7%と推定される。メーター読みであれば下り坂では102km/hから先もまだ伸びそうだった。

 L3はメーターパネルが小さく目盛りも少ないために速度計が非常に読みづらい。発進加速はGK9のもっさり感がいくぶん解消され、中間域のもたつきもなくなったように思う。そればかりか、出足はSL3より速そうだったし、実際に進行距離ごとの到達速度もGPS数値上はSL3よりL3の方がリードしていた。K9モデル以降、エンジンスペックは全てのモデルで同じ。同じ所で測定しても同じ日ではないために追い風か向かい風かという違いがあったかもしれない。機会があればSL3で再度測定してみたいと思うが、少なくとも廉価版であるL3が上位機種であるSL3に加速力で劣っていないと思う。どちらも動力性能にストレスはない。

 静寂性SL3の勝ち。SL3は加速も減速もクルルル〜ンと常時静かに回る。L3はグアアア〜ンと加速し、ドルルルル〜ンと減速するあたり、K7までの余韻が残っている。マフラーは形状だけでなく内部構造も異なるのだろう。パーツリストで動力性能や静寂性に影響を与えそうなところを見ると、K6以降で変わったもの=6、K7以降で変わったもの=7、K9以降で変わったもの=9、L3以降で変わったもの=3、CF4MAだけ異なるもの=S、K5・K6以外全てのモデルで異なるもの=E(very)、と様々にある。ざっくばらんにまとめると以下のとおりになる。

6=プレッシャーセンサー
7=エアクリーナ―(CF4MA も違う)
9=ピストン(K9とL3・SL3も違う)、スロットルボディ、マフラー(L3とSL3も違う)、クーリングファン、トランスミッション、イグニッションコイル、マグネットローター
3=カムシャフトドライブチェーン、クランクシャフト、燃料カットセンサー
S=インテークバルブ、インシュレータ―
E=O2センサー(K9以降新設)、マグネットステータ(K7まで共通)、FIコントローラー(K6まで共通)、レクチファイヤ(K7まで共通)

 乗り心地SL3の勝ち。SL3の方がわずかながらサスが柔らかく、路面の凹凸を通過した際の衝撃が小さいような気がする。L3についてもK9までの常時視線が揺さぶられるような感覚がなくなったような気がする。パーツリストを見ると、K7以降で前後サスが大きく変わり、L3SL3の違いは、フロントサスのスプリングとインナーチューブ、そしてリアサスである。K9L3=SL3の違いは、意外にもフレームとユニットスイングを連結する部分のブッシュとスペーサーくらいであった。

 運動性能すりぬけ戦闘力もほとんど優劣なし。SL3の方が発進時の直進安定性がわずかに良かったような気がするが、これが勘違いでなければサスの影響だと思われる。

 着座姿勢もほとんど同じだが、地面に両足をべったり付けた状態で深く腰を掛けるとSL3の方が若干ハンドルが遠い。足を伸ばした状態でハンドルを切ってみると膝がハンドルに触れにくくなっている。ホイールベースが同じなので、シート形状を改めたことで着座位置がわずかに後方にズレたのかもしれない。また、SL3の方がフロアステップ表面に付けたギザギザが靴の裏面を捉えやすく、雨の日も靴が滑りにくくて良い。その一方でインナーラックの収納容積はL3より大きく減っている。SL3のインナーラックに地図など差そうものならペットボトルの出し入れも容易でなくなるくらいに薄い。この薄さで膝元スペースのほとんどを稼いでいる。

 メットホルダーL3には左側に1個付いている。右側はオプション。SL3には左右2個はじめから付いている。どちらも相変わらず役に立たない。当方のジェットヘルメット:アライ・MZを左側のメットホルダーに引っ掛けると、シートを閉じる間にメットが落下してしまうのだ。メットホルダーの爪が前に向いているのだから当然だよね。なぜ後ろに向けないのだろうか。ヘルメット収納力L3で試したところ、MZは収納できたが、フルフェイスがショウエイ:Z7(M)、アライ:RX-7V(2L)、Quantum-J(2L)で試したがいずれもシートが閉まらなかった。かつてリアBOXプレゼントキャンペーンを実施していたのはこのためだったのか。ちなみにヘルメットボックスは、K5=K6、K7、K9=L3、SL3と型番が異なっている。

 コンビニフックはコンビニのビニールくらいしか引っ掛けられないL3よりカバンを引っ掛けられるSL3の方が良い。リアキャリア面積もSL3の方が広くて良い。ウインカースイッチL3と同じ部品番号なのになぜかSL3の方が出しやすかった。夜間の被視認性はボディ幅、テールライト幅が広いSL3の方がいいと思う。L3はバイクに興味のないドライバーから見れば50ccと変わらないだろう。

 改めて実感したのが航続距離の差。燃料タンク容量の300ccの違いというよりも燃料計の見やすさが両者で大きく異なる。
 SL3は燃料計の目盛りが6つある。満タンにして6個の目盛りが5個になった間に走行した距離が約100km、5個から4個で約20km、4から3が約30km、3から2が約20km、2から1が約30km、そこから1個の目盛りが点滅し始めたのが約40km、平均燃費から逆算して点滅からガス欠まで約40km。ツーリングで約280km航続できるが、目盛り1つあたりの走行距離が25km程度で安定しているので給油タイミングを掴みやすいのだ。
 一方のL3はFとEの間に目盛りが1つしかない。満タンにしてFに針が重なるのに約80km、そこから中央に針が重なるのが約70km、そこからEに重なるのが約60km。平均燃費から逆算するとガス欠まであと60kmは走れない。航続距離は270kmいくかどうかで大して変わらないが、燃料計の針がFからEの間にあるのは130kmしかなく、ガス欠を恐れ、早め早めに給油するので実質的な航続距離がかなり短いのである。そして給油の度に安っぽくて噛み違いの起きやすい燃料キャップを体験することになるのだ。
 燃費は44〜48km/LでSL3L3に優劣はなかった。

 ところでアドレスV125SのSって何の略だろうかと思う。今回の試乗でSmoozeな発進加速、Silentな排気音、Softな足回り、Saftyな追加装備(アラーム、テールライト面積)を確認できたが、L3 と比べてSportyか?と問われれば動力性能に差がないのでNOと答える。両者のどちらが良いか問われたら断然SL3だが、アラーム・時計・見やすい燃料計、そのあたりに数万円の価値を感じるかどうかで判断が分かれるだろう。私だったら安いL3を選んでしまうかもしれない。小回り効いて駐輪場にすっぽり収まり荷物もけっこう載る。キング・オブ・ゲンチャ、生産終了が近いとのことなので早めに購入することをお勧め致します。

 今回、最新のパーツリストを拝借し、アドレスV125シリーズ・パーツ相違表なるものを作ってみた。外装のように走行性能に影響のない部位は省略している。周辺部品としてボルトのような走行性能に影響のない部品もそのまま掲載している。メーカーや当方の誤植が含まれている可能性と、著作権等を理由とした掲載停止の可能性をご了承願います。

 また中古車を検討する方のために現時点での改善対策等の履歴を記します。多いね(笑)
詳細URL http://www.suzuki.co.jp/about/recall/〜。内容 (R)=リコール、(K)=改善対策、(S)=サービスキャンペーン。対象モデル。対象部位。

2005/1025.htm (S)K5 FIコントロールユニット
2006/0131.htm (R)K5 ステータリード
2006/0131b.htm (S)K5 ソレノイドサービスキャンペーン
2007/0801/index.html (R)K5〜K7 燃料タンクキャップ 
2007/1011a/index.html  (R)K7 ブレーキマスターシリンダー
2008/0425/index.html  (K)K6〜K7 燃料ホース
2008/1208/index.html  (K)K6〜K7 ブレーキスタートリレー、サイドスタンドリレー
2009/0420/index.html  (S) K5〜K7 キックスターターレバー
2009/0525c/index.html  (S)K9 発電機ステータリード
2009/0525b/index.html  (R)K5〜K9 燃料タンクキャップ
2009/0709/index.html (R)K9 燃料タンクキャップ
2010/1209c/index.html  (R)S(U)L0 速度センサーハーネス
2010/1129/index.html  (S)S(U)L0 水抜き穴
2011/0118/index.html  (R)S(U)L0 燃料噴射コントロールユニット

2017.1.31 記述

表紙に戻る