SYM
JOYMAX125i
GTS125i

 長所: 1重厚感 2快適性 3装備 4収納力 5航続距離
 短所: 1足着き性 2発進加速 3すりぬけ 4取り回し 5燃費

 SYM・JOYMAX125i(エスワイエム・ジョイマックス125アイ)は、RV250iの後継モデル:JOYMAX250iのエンジンを125?に換装した原付二種スクーターである。発売当初はGTS125iを名乗っていたが、商標絡みで日本国内ではジョイマックス125iと名前を変えることになった。今回は慣らし運転直後の2014年初期型モデルに試乗した。

 エンジンはセル一発で問題なく始動できた。振動はアイドリング時のみ車体をわずかに震わすが、発進以降はほとんど気にならない。エンジン自体は軽やかに回転する。アクセル全開時の排気音はそれなりに大きいが、速度が上がるほどに排気音は風切り音によってほとんど消されてしまい、運転者には心地よいエンジン音だけが残る。

 タコメーターによればアイドリング時のエンジンは2,000回転。減速時にアクセルを戻しても5,000回転は回っていて、ちょっとでもアクセルを捻ると6,000回転以上、加速する際は常に7,000回転以上回っている。動力性能は全域でRV125iに負けてしまうが、RVシリーズ同様に惜しみなく高回転をキープするおかげで、このクソ重い車体をなんとか交通の流れに乗せることができる。

 運転席の着座姿勢RV125iより良い。フロアステップはフラットではないが、足を前に伸ばして踏ん張ることができる。どんなケツデカでも受け止める広大な座席を持つ。グリップの良いシート表皮と腰を押さえるシートバックのおかげで長時間乗車も苦にならない。欲を言えばフロアステップはもう少し前にも下にも広げて居住性の向上⇒操縦性の向上⇒低速安定性の向上を図ってもらいたかったが、総じて運転席居住性は原付二種スクーターとしてはトップレベルにある。試乗期間中、体はどこも疲れなかった。

 いかなる速度域でもどっしりとしていて乗り心地も基本的にはいいのだが、85?の負荷をかけて5段階調整できるリアサスを2番目に柔らかいポジションにセットしてもなお、段差を乗り越えた際のサスペンションの動きにマジェスティ125ほどのフラット感はない。RV125iより乗り心地はいいが、最高級シティクルーザーと呼ぶためには、何かもう一点工夫が欲しいという気持ちはある。

 快適性重視の座席と窮屈さを感じさせないフロアスペース、そしてバンク角を確保するために足着き性は犠牲になっている。170?ない私が運転席に深く腰を掛けると、両足共につま先立ちが精いっぱいだ。車列に従って走行し、一切すりぬけはしない紳士な方には問題とはならないが、低速すりぬけからの急停止、それと降車時は思ったより車体は不安定になるので気を付けたい。乗降時はサイドスタンドを活用することをお勧めしたい。

 大きさは250?スクーターそのもの。車体も先端から後端まで万遍なくずっしりと重い。ハンドルを握る左手とグラブバーを握る右手の開き・高低差は大きく、小回りの利かない取り回しは傾斜地では結構苦労することになるだろう。良い意味でも悪い意味でも原付二種クラスの軽快感は微塵もない。しかし、センタースタンド掛けは構造の工夫からとても軽いものだった。

 この格納式タンデムステップは車体の大きさに比して細くて頼りなさそうに見えるが、乗降時も巡航時も確実に体重圧がかかり、同乗者に着座姿勢の安定と適度な緊張感を与えることができる。雨天時の乗降時だけ足を滑らせないよう注意してあげよう。
 後席の広さ、シート表皮のグリップ、シートバック、グラブバーの握りやすさについても文句ない。運転席より一段高い座席で見晴らしも良く、後席の居住性、快適性、開放感、どれをとってもクラストップレベルである。

 

 85kgの負荷をかけ平地でアクセルを全開にしたところ、発進から約100mで69km/h、約200mで82km/h、約300mで89km/h、約400mで95km/h、約500mで98km/h、約600mで100km/h、約700mで102km/h、約800mで103km/h、約900mで平地最高速104km/hを確認した(全てメーター読み、以下同じ)。下り坂では113km/hまで確認できた。
 数字だけ見ると発進加速はRV125iよりちょい有利で後半が負けているが、実際は全域でRV125iに負けている。体感する発進加速はスーパーカブ110の3速発進並みにトロいので、俊足系スクーターから乗り換えると不満に思うだろう。泰然自若。鷹揚に走るのが似合っている。

 前後にステンレスメッシュホース2ポットピストンキャリパーを採用する油圧ディスクブレーキは強力かつコントローラブルだ。
 乾燥路面での急制動、右レバー(前)だけ強く掛けてもロックしなかった。左レバー(前後連動)だけ強く掛けるとスリップ音とともにスーーと滑り出した。その際車体は右にも左にも流れることがあるが、ホイールベースが長いこともあり焦ることはなかった。左右レバー同時に強く掛けるとほとんど滑ることはなかった。スポーツバイクのように右レバーを強く掛け、左レバーを滑らない程度に併用すれば乾燥路面ではきちんと止まれる。短制動時は大きな減速Gが身体に掛かるが、ケツが座席から滑り落ちないようにシート表皮がグリップしてくれる。
 一方、WET路面砂利道ではさすがに右レバー(前)だけ強く掛けるとすぐに滑り出した。前輪の滑りは直進性が高いので、すぐに右レバーを緩めれば、対処できた。標準タイヤ:台湾製MAXXIS PROは速度超過と急制動を控えれば雨天時でもソコソコ走れそうだ。このコントローラブルなブレーキはどんなタイヤに履き代えてもグリップ限界まで安心して使うことができよう。

 比較対象区間304.7kmを走行したところ、オドメーターは321.5kmを指した。距離計に+5.5%の誤差があるならば、この区間の平均燃費33.7km/Lに修正される。RV125iよりわずかに劣る結果だが、この重厚感と快適性を得るためにガソリンを消費していると思えば、まんざら悪い数字ではないと思う。

 高い位置から車体を倒せるのは利点だが、車体に比して不足気味の動力性能で旋回性には向上の余地がある。直進性については一度動き出せば非常に高いものだが、極低速域は注意を要する。
 すりぬけ。停止寸前に不安定になる傾向がある。また、ミラーがハンドルマウントではないので、対象物と自車ミラーとの目測を誤るとハンドルでの緊急回避が難しい。一定の速度と十分な横幅を保って安全にすりぬけることをお勧めしたい。

 操作性RV125iで遠かったブレーキレバーや太かったハンドルグリップが共に少し握りやすくなった。ハンドルを左右に動かさなくてもハンドルロックが決まるようになった。
 給油口は股下の蓋を開くと鍵付きの燃料キャップが登場する。クルマのように給油ノズルを突っ込み、逆流防止機構が作動するまでの給油を指示しているが、そこから更に2L位ガソリンが入る。タンク容量が公称12Lだが、給油口付近の14の文字は最大14L入るという意味なのだろうか?
 ホーンスイッチの下にシートオープンスイッチがある。メインスイッチがONの位置にあればエンジンが始動していなくても、シートを電磁的にポップアップさせることができる。更にメインスイッチを左に回しても機械的にシートをポップアップさせることができる。シートを開けると、開いた角度でほぼ固定できるようにダンパーが装着されたが、最大角度が小さいのと、シートを閉じた際にダンパー自体が収納スペースに入り込んでしまう点が惜しい。それでもシート下の収納力はすさまじい。前半部分にMサイズのジェットヘルメット:アライMZを置いても後半部分にはさらに大きなヘルメットを置くことができる。スネル規格を満たすフルフェイス1個とジェット1個を飲み込むのである。ヘルメット以外では30L登山用デイパックは左右を絞り込めば収納できたし、小型三脚などもすっぽり飲み込むが、シート裏の段差が大きくて、収納できる深さについては開いたときの見た目ほどではなく、シートを閉じてみないと分からない。シート下には作業灯(常時点灯)と点火カットスイッチが仕込まれている。

 驚くことにヘルメットホルダーが装備されていない。プラスチックの突起すらない。ジェットヘルメットであれば後席の背もたれに嵌めることできるし、後席淵にゴムネットのフックが掛かるので、シート開閉を妨げずに荷物を固定することができる。シート下が買い物の荷物で埋まってしまっても、ヘルメット2個を仮置きすることはできる。

 積載性。フロアトンネルができて足元に荷物は積めなくなった。いわゆるコンビニフックの類もない。標準状態で頼れるのはリアシート上部のみである。

 インパネ右側に小さなポケットがある。ワンタッチで開けることができるが、施錠はできない。奥にはDCソケットが装備されている。ペットボトルは350mlまでなら寝かせて収納できる。
 試乗期間中が夏だったので、恩恵は受けなかったが、足元中央から温風を出すことができる。

 ヘッドライトは35/35Wの常時双灯式になった。両目の上に眉毛がLED点灯し、ライトスイッチによって眉毛のみの点灯も選択できる。ヘッドライト下の左右フォグライトJOYMAX250iには装備されるがバッテリー容量の関係でJOYMAX125iではダミーとのことである。被視認性については申し分がないが、照射力についてはRV125iの55/55Wの方が良かったように思う。パッシングスイッチがあるが、これで先行車をオラオラしたところで追い越せる加速力はない、、、。一方サンキューの意味でハザードスイッチを使うことはあるだろうが、スイッチの場所が悪すぎるので走行中の操作は控えるべきだ。

 

 メーターパネルはずいぶんと豪華だ。アナログ表示は左から順に燃料計、速度計、回転計、水温計。回転計の中ではモード切替えで、時計+累計距離計→時計+区間距離計→電圧計+区間距離計とローテーション表示する他、シートオープン警告、サイドスタンド警告(エンジン停止)などを表示する。

 ミラーはもともとの面積が広いうえに外枠いっぱいに鏡面がとられ、歪みも少ない。自分の肩が映らないほど外側に広げれば斜め後方の死角が減り、左右ミラーに映る車線が平行になるまで内側に向ければ背後の死角が減る。ミラーアームはハンドルにではなく少し遠くボディに設置された。クルマでいうところのフェンダーミラーのごとく視線移動が少なくて済む。また、ミラーアームごと畳むことができる。視界に関しては非常に好感の持てるミラーである。ミラーの表側はLEDウインカーが設置される。画像はハザード状態を撮影したものである。

 キムコ・DOWNTOWN125iヤマハ・X-MAX125なども同様なキャラクターだと思うが、これほどの重厚感と快適性を備えた原付二種スクーターは日本国内モデルとしては存在しない。指摘した短所は『デカい』ことが原因の相対的なものであり、JOYMAX125iの存在価値を下げるものではない。でもできればJOYMAX250iを選んだ方が幸せになれる。それでも敢えてJOYMAX125i を選ぶ理由があるとすれば、JOYMAX250iだと1,850円(ETC休日割引)〜3,910円(現金)する瀬戸内しまなみ海道JOYMAX125i だと500円(現金)で渡れることである。

2014.7.21 記述

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