SYM(サンヤン)
RV125EFI

 マジェスティ125FIに対する
 長所: 1動力性能 2制動力 3運転席居住性 4すりぬけ
 短所: 1乗り心地 2操作性 3質感

 台湾のバイクメーカーであるSYMは、打倒マジェスティ125(マジェ)を目指してRV125を開発したという。そのせいかデザイン的にもイルカ(マジェ)を捕食するサメ(RV125)に見えるのは気のせいだろうか。今回試乗したRV125EFIはキャブレーターだったRV125JPの燃料供給方法を電子制御燃料噴射方式に変更して性能を向上させたモデルである。

 始動性。その日の最初の一発はスロットル操作が必要だったが、それ以降はいつでもセル一発で始動できた。キックスターターも装備している。

 発進直後はマジェと似たようなものだが、その先が明らかに違う。中間加速はアドレスV125と同等、高速域の伸びは150ccのスクーターと同等である。とても154kgの車体を4st125ccで動かしているとは思えない。さすがは水冷・4バルブ・電子制御燃料噴射である。

 アクセルを全開にした。発進から100m以内に60km/h(全てメーター読み。以下同じ)、300mで既に90km/h、500mで既に100km/h、600〜700mで110km/hまで伸びた。長い直線区間で最高速は120km/hと表示された。体感速度と実際の速度にマジェほどの差は感じなかったが、今回も地図ソフトで実走行距離を計算してみたら距離計に3%程度のプラス誤差があった。

 制動力もすごい。そっと掛ければそっと減速し、ガツンと握ればガツンと減速する。動力性能に対するこの制動力はスポーツバイクのレベルに近い。

 振動はアイドリング時のみハンドルにわずかに認めるだけで、発進以降はほとんど感じない。エンジンは実に滑らかに回転する。まるで古いエンジンにマイクロロンなどの添加剤を入れたときのような滑らかさだ。不快な騒音は出さないのに、走りを誘うような心地よいサウンドは静けさの中にちゃんと隠されている。実にいいエンジンだ。CVTも不満のない変速をする。

 燃費は流れの良い国道をハイペースで走行して33.4km/Lになった。距離計の誤差を考慮して32.3km/L。燃費はキャブ仕様のマジェとほぼ同等だった。

 サスペンションは硬めで、綺麗に舗装された路面を高速で駆けるには最高である。強く減速してもフロントが沈み込まないし、強く加速しても十分なトラクションを得られるし、急に旋回しても粘り強いからである。一方で路面が粗くなってくると、衝撃が強まる。前輪で受けた衝撃と後輪で受けた衝撃を別々に連続して受けることになる。大抵のスクーターがそうなのだが、マジェの、ほぼ同時に前後サスが減衰するようなフラット感が忘れられない。

 着座姿勢は良好である。ハンドルの高さはほぼ同じだが、シートが前後ともにマジェよりわずかに高い。特に運転席は数値以上の差を感じる。これによってもたらされる違いは足付き性旋回性である。170cmない私の場合、マジェはべったり足がついて、なお膝が曲がるのに対し、RV125は足がべったりつくだけで膝は曲がらない。高い位置から車体を倒せるRV125の方が体重移動はしやすかった。車体のスリムさと相まってすりぬけもRV125の方が有利であった。

 運転席居住性はRVに軍配を上げたい。シート表皮のグリップがいいことと、投げ出した足の踵がフロアに引っ掛かってくれるので、股がいくらか楽になる。長時間走行するといろんな位置に足を動かして疲労を軽減したいものだが、マジェは足を前に投げ出す以外はあまりしっくり来ないポジションだったが、RVはフロアに足を置いたり、後席側に膝をたたんだりもできた。これも運転席を高くした副産物である。もうちょっとフロアを低めてもらえれば、より快適になると思う。

 操作性装備
 日本のスクーターと同様にハンドルロックもシートオープン(エンジン停止時専用)もこのイグニッションで出来るのだが、精度が低くてハンドルを左右に動かしながらでないとハンドルをロックする位置が見つからない。
 また給油キャップの脱着にも同じカギを使うのだが、これも精度が低くて『脱』にも『着』にも一苦労した。
 ハイマウントストップランプを装備して被視認性を向上させている。ヘッドライトも明るく夜間走行は安心だ。
 ウインカースイッチの位置がちょっと上すぎる。
 一般的にはパッシングスイッチとなる所にシートオープンスイッチ(エンジン始動時のみ)が付いている。

 収納スペースはシート下のみとなる。シートは進行方向に向って右斜めに開閉するので、開き上げたシートの、蓋としての安定感は今まで取上げたスクーターの中で最悪である。サイドスタンド使用時はシートが閉まってしまう。シートを固定するダンパー・ワイヤーは付いてないので、センタースタンドで車体を水平にしても風が強いとシートがすぐに閉まってしまう。なるほど、イグニッションキーだけでしかシート開閉できないと、風が吹く度にエンジンを再始動させることになるから、シートオープンスイッチが別にあるのか。それならばシートを固定するワイヤーをはじめから付けておけばいいのに。収納スペースの開口面積を少しでも広げたかったのだろうか。

 ではそこまでして容量を増やした収納スペースの使い勝手はどうだろう。まず、アライ製ジェット:SZ-RAM3を1個入れたら、上部のエアダクトが引っ掛かるのか、受け金具の精度が低いのか、上からかなり圧迫させないとシートが閉まる実感がなかった。その隣に半キャップを入れてみた。底面から出っ張りがあり、思ったより深さがない。半キャップといってもフルフェイス並みの肉厚があるものは入らなかった。

 いかにもヘルメットが2個入りそうな見た目だが、実際はマトモなメットを1個入れたら、後は+αのスペースと割り切るべきである。マジェの場合はその+αのスペースが、インナーラックになる。よってトータルでの収納容積に差はない。ヘルメット以外のものを収納するのであればRV125が断然有利になる。

 メーターは豪華だ。速度計はアナログ、それ以外はデジタルで表示する。燃料が不足すると液晶画面による点滅とLEDの点灯の双方によって警告してくれる。オイル交換時期警告灯、トリップメーター、時計、水温計、なども当然のように装備している。燃料タンクは8.5Lとのことだが、ガス欠の症状が出た時に給油したら7Lしか入らなかった。

 細かい点で設計精度の低さがあるものの、この性能がこの価格で手に入るのだから文句は言えまい。比較されるバイクはやはりマジェスティ125FIだろう。どちらも良く出来ているので好みで決めて欲しい。強いて言うなら、加速性能や制動力の良さから男性にはRV125EFIを、乗り心地や足付き性の良さから女性にはマジェスティ125FIをお勧めしたい。

 RV125EFIには170ccエンジンを積んだRV180EFIもあり、有料道路を使う機会の多い人にはそちらもお勧めしたい。しかし、重量も同じで部品点数も変わらないのにRV125EFIより6万円も高いのってなんか悔しい。

http://www.sym-jp.com/index.html

2007.2.25 記述

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