タケオカ
アビーキャロット(2st)
ミリュー(EV)

 タケオカ・アビーキャロット 2st・丸ハンドル車
 長所: 1フルカバードボディ 2選べるエンジン
 短所: 1乗降性 2着座姿勢 3室内騒音

  

 ミニカーを生産するメーカーは何社かあるが、フルカバードボディが欲しいならタケオカを選ぶしかない。今回取りあげる2台は姉妹車種と言える。アビーキャロットガソリンエンジンを、ミリュー電気モーターを原動機とする。アビーキャロットのエンジンはかつて2stだったが、排ガス規制に対応するため現行モデルは4stインジェクションに換装された。

 今回試乗させて頂いたアビーは個人の方が所有する2stモデル。キャブレーターをホンダ・DIO-ZXのものに換えてノーマル状態よりパワーを搾り出している。50km/hしか出ないノーマルのミツオカ・MC-1に比べると出足からして元気さが違う。平地最高速はメーターを振り切って70km/hほど出ていた。だが登坂は辛い。アクセル全開にしても60→50→40Km/hと徐々に速度が落ちてくる。車体と運転者を合わせて軽く200kgを超えるから無理もない。幹線道路を走る際は後続車両に気を使う。

 制動力はMC-1と同等かそれ以下である印象を受けた。車輪が完全停止する寸前までブレーキペダルを強く踏み続けないと安心して止まれない。今の乗用車はタイヤのグリップもいいしディスクブレーキだし、まして真空倍力装置で伝達を強めているから、それに慣れている人にガソリンエンジンのミニカーを推奨できない理由があるとすれば、その最大のネックが初期制動力の弱さである。アビーのようにワイヤーで引っ張られるだけのドラムブレーキじゃあ物足りない。4stになってやっと油圧式ドラムに換装されたが、それでも物足りないだろう。

 室内騒音もすごい。一般的な2st50ccスクーターよりもホンダ・ジャイロキャノピーが、ジャイロキャノピーよりもミツオカ・MC-1が、MC-1よりもアビー(2st)が賑やかである。カバーされる面積が広がるほどに、室内にこもる騒音も大きくなるのだろう。フルカバーのもうひとつの欠点は横風に弱いことである。風の強い日に運転するアビーは高速道路で運転する軽ワンボックスによく似ている。横風の強弱に合わせてリアルタイムにハンドルを左右に動かさないと真っ直ぐ走れないのだ。横風が強い日はハンドルから両手が離せない。

 乗降性着座姿勢も苦しい。ボディ剛性確保のため、右にしかドアを設けていない。荷室へのアクセスもスイング・バックドアではなく、窓の部分だけがダンパーなしで下に開閉する簡易なものである。
 座席についてもボディと独立したものではなく、FRPシャーシに凹凸を作り、そこに座面を貼り付けた簡易なもので、位置調整は一切できない。170cmない私でもペダルが近すぎて、太ももは常に座面から浮いてしまう。お尻の薄い人だと長時間走行は辛いだろう。

 以上の欠点をもってしてもフルカバードボディであるアビーが気に入った。横から降ってくる雨・雪をしのげるし、ジャイロキャノピーMC-1のように風が背中に巻き込んでこない。換気や室温調整には左右の窓を適宜スライドすればいいし、全開にすれば暑い日も走れそうだ。窓を閉めつつフロントウインドの曇りを取るためにオプションのデフロスターも用意されている。

  

 タケオカ・ミリュー(EV)
 長所: 1フルカバードボディ 2着座姿勢
 短所: 1航続距離

 今回タケオカで試乗したミリューはミリューRとなる前の初期型ミリューである。
 車体サイズはミニカー規格をいっぱいには使っていない。全長2,150mm、幅1,140mm、高さ1,350mm。クラッシャブルゾーンがないので車体外寸がそのまま室内空間という感じである。アビーと異なりちゃんとしたシートが付いている。前後スライドリクライニングが可能で、シートベルトも3点式である。座席に座ってみると思ったより狭くなかった。アクセルペダルもブレーキペダルも右足で無理なく踏めるので、着座姿勢は合格点だ。

 座席の後方にはジャイロUP並みの荷物スペースがある。後ろの窓を開けることでアクセス可能だが、後窓の面積が狭いので、ビールケースのような重量物を持ち上げて出し入れするのは相当苦しいと思う。

 タイヤは8インチ。サスペンションはリア車軸式だが、フロントは左右独立ストラットを採用し、4輪車として最低限の路面追従性は得ている。コイルスプリングは普及タイプの50ccスクーターと同レベルのもので、路面が粗いとバタンバタン跳ねるが、舗装路を普通に走行する分にはまずまずの乗り心地である。原動機がEVモーターだからアビーより断然静かで振動も少ない。乗り心地に神経が向かうほど気持ちに余裕ができるのである。

 原動機の搭載位置からするとリアミッドシップということになる。前輪には駆動力が加わらないし、タイヤも細いので、とてもクイックなハンドリングである。速度を上げるともっと手応えが欲しいが、下駄代わりのミニカーにそれを望むのは贅沢というものである。

 前進⇔ニュートラル⇔後退の切り替えは左側のスイッチで行う。後退時は室内ブザーで運転者に注意を促してくれる。
 発進時のトルクが強めでアクセルをそっと踏んでも内燃機関のようにそっと動き出さない。出足の一歩だけはスイッチのON⇔OFFのような唐突な反応を見せる。後退時に速度を微調整する際は、アクセルをスイッチのようにちょんと踏んではすぐ離すという動作が、状況によっては必要になる。(このあたりは現行車種のミリューRで改善されているという。)アクセルを踏み続けても内燃機関のように徐々にトルクが盛り上がってくるわけではない。速度は少しずつ上昇するも、これから力がこみ上げてくるという期待感はない。正にフラットトルクである。

 車としての完成度はミリューの方が上だし、ガソリンの値段が下がりそうにないので、どちらか迷うのであればミリューRをお勧めしたいが、航続距離が気になる人や、ある程度エンジンをいじれる人が趣味で乗るならアビーも面白いと思う。

タケオカHPアドレス紹介  http://www.takeoka-m.co.jp/

2011.1.28 一部書き換え/2008.1.22 記述

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