ヤマハ・パッソル(EV)

 長所: 1バッテリーの携帯性 2取り回し
 短所: 1航続距離 2最高速 3積載・収納性

 ヤマハ・パッソルが電動になって復活した。当初は地域限定での先行販売(215,000円)であったが、細部を改良して03年5月、全国発売(240,000円)に至った。カタログで分かる変化は4色になったカラーリング(+5,000円で更に4色)、25,000円アップの値段、1kgアップの重量だが、両車を試乗してみて改良が進んでいることを実感した。

 乾燥重量はわずか45kg。メットインスクーターのようにフルカバーされておらず、とてもスリムでコンパクトな車体である。電池切れになって押し歩くにも全く苦にならない重さだ。

 あまりに軽いのですぐに盗まれてしまいそうだが、4桁の暗証キーを入力しないとモーターが動かない防犯機能がある。フレームナンバー/エンジンナンバーも見やすい位置にある。

 スロットルグリップを回すとうぃいいい〜〜いんというモーターの音と共にスムーズに発進する。当然ながら内燃機関特有の騒音や振動が全くない。ゆっくり回せばゆっくりと発進し、速く回せばそれなりの加速で発進する。無段変速ではあるが、アクセルを一定にするとリアルタイムに定速走行に落ち着くあたりは4stバイクの低速ギアを用いているようなアクセルワークである。

 タイヤが細く、ニーグリップもできないわりには低速での安定性が良い。既存のスクーターにはわずかに及ばないかも知れないが、電動アシスト自転車をはるかにしのぐ低速安定性である。

 発売当初のパッソルは旋回中に体勢を立て直したいのにアクセルを全開にしても思うように安定性を回復できなかった。しかし03年5月に試乗したモデルでは旋回性が向上し、超タイトなコーナーを30km/hで攻めても足を接地せずにクリアーできた。バッテリーを水平搭載して重心を下げればもっと旋回性が良くなるような気もするが、女性を意識した商品なのでフロアに凹凸は作れまい?

 前後ともにドラムブレーキだが、軽い車体には十分な制動力である。発売当初のパッソルは急ブレーキですぐに後輪がロックしたが、今回のモデルはそれも改善していた。いろいろ試してみたが旋回中に後輪だけフルブレーキしない限りロックする心配はまずない。

 試しに歩行者の真後ろを徐行してみた。案の定、市街地の雑音にまぎれて歩行者はパッソルの接近に全く気付いていなかった。人ごみの中を流すには十分に注意したい。

 最高速は公表値40km/hであるが、試乗コースは直線区間が短くて34km/hまでしか確認できなかった。しかしこれだけ静かに走れるのだから、そんなにスピード出なくてもいいやと思える。

 航続距離は公表値32km(30km/h定地走行)だが、実用上は15〜20kmになるとヤマハ自らが公表している。登坂や全開走行では電気消費がさらに多くなるという。片道10km以上の移動になるなら出先にも充電器(15,000円)を用意しておくか、予備バッテリー(54,800円・6kg)を携帯する必要があろう。

 尚、充電はバッテリー単体でもバイク本体に取り付けた状態でも可能である。出先で外して細めに充電するも良し、冬季は出発前まで室内で温めておけば少しは航続距離が伸びるだろう。これだけ軽いボディならもう1個並列搭載して航続距離を倍にしてもいいと思うのだが、本体もバッテリーもギリギリの値段で販売している為、2個搭載の折にはそのまま値段もアップしてしまうという。

 左ミラーフロントバスケットを合わせて245,800円。購入後はランニングコストを意識しなくていいので、ジョルノクレアあたりの純国産4stスクーターと比べても十分にリーズナブルだと思う。最高速40km/h、重量45kg以下、収納スペース無し、という共通点からスズキ・チョイノリ=59,800円もライバルになろうが、無排気・無振動・低騒音は一度味わうと病み付きになる。とにかく静かなスリッパが欲しい人にパッソルはお勧めできる。

2003.5.18 記述

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